EXHIBITIONS

パンとサーカス展

岡本瑛里、荻野夕奈、金子富之、熊澤未来子、水野里奈、山本竜基

島田雅彦著『パンとサーカス』(講談社、2022)表紙
デザイン:大鴉ノア(川名潤) Courtesy of Kodansha, Mizuma Art Gallery

岡本瑛里 「コントラ・ムンディ」ユニットロゴ
© OKAMOTO Ellie Courtesy of Mizuma Art Gallery

 ミヅマアートギャラリーでは、岡本瑛里、荻野夕奈、金子富之、熊澤未来子、水野里奈、山本竜基による「パンとサーカス展」を開催する。

 本展は、島田雅彦による新聞連載小説『パンとサーカス』の挿画を担当した6名の作家からなるアーティストユニット「コントラ・ムンディ(*)」のグループ展。小説連載の全382回に及ぶ挿画の原画、および小説の世界観に着想を得た新作を一堂に集めて展示する。

 小説『パンとサーカス』は2020年7月31日から2021年8月29日まで、中日新聞、東京新聞など新聞三社連合各紙の朝刊紙上に連載され、今年3月に講談社より単行本が刊行。冒険とサスペンス、政治と社会、宗教と愛などあらゆるジャンルの境界を越え、ニューヨークからメタバースに至るまで次々に舞台を変えながら、表面的日常には見えてこない社会の構造が浮かび上がっていく。それぞれの思惑を秘め自らの生命の火を様々に輝かせる登場人物たち。混迷の度を深めながら再構成が進む現在の社会情勢を反映したエンターテインメント作品で、今日の世界のなかで生きる姿勢を読者に問いかける、壮大な革命小説だ。

 その小説の掲載各回に添えられた挿画も、スタイルの異なる6名の作家が次々に交代しながら担当するという型破りなもの。登場人物の描写は各作家に委ねられ、同一の場面や人物に対しても描き手の視点が異なることで違った印象が生まれている。読者は現実の世界と同様に、新しい情報を得るたびに何度も小さな混乱と懐疑を経て、世界の事象を各々で補完しながら把握することになる。

 本展では、普段の制作と異なる試みに挑戦した6名、岡本瑛里、荻野夕奈、金子富之、熊澤未来子、水野里奈、山本竜基の挿画の仕事を紹介するとともに、本展のために制作された新たな絵画作品も公開する。

*──ユニット名「コントラ・ムンディ」とは作中で主人公たちが結成する秘密サークル名であり、ラテン語で「世界の敵」を意味する。