EXHIBITIONS

川角岳大 個展「呼吸をとめて」

2022.04.16 - 05.15

川角岳大 Crash 2021

川角岳大 Front dog 2019

川角岳大 untitled 2020

川角岳大 Our dog we don't know 2020

 川角岳大の個展「呼吸をとめて」がToken Art Centerで開催される。5月15日まで。

 川角は1992年生まれ、愛知県出身。2014年に愛知県立芸術大学美術学部美術科油画専攻を卒業後、2017年東京藝術大学大学院美術研究科を修了した。主な個展に、「ミクリ」(Lavender Opener Chair、東京、2020)、「川底の葡萄」(gallery N、愛知、2020)、「タイミングの拍子」(fresh、埼玉、2018)などがある。

 川角はこれまで、自身にとって身近な、しかし人間とは異なる環世界を持つ犬を象徴的なモチーフとして扱うなど、空間や対象の見方についての自身の考えを示すような作品を制作してきた。展示の多くで、絵画や立体、既製品を組み合わせたレリーフなど複数のメディアを用いて空間構成しているのが特徴だったが、一転、本展に出品されるのはすべて絵画作品となる。

 川角は2年ほど前に関東から三重へと居を移し、制作と並行して狩猟や魚突き、畑仕事を行いながら生活している。そこで、これまで試みた空間や対象の見方についての実践を時間をかけて俯瞰しつつ、日々の生活を題材とした新たな絵画シリーズに取り組んでいる。

 今回の絵画に現れるモチーフはそうした三重での日々で経験したもの。素潜りで一度は捕らえた石鯛を逃してしまったことや、車の運転中に飛んでいる鳥と衝突してしまったこと、日がな畑での草むしり、空中で繰り広げられていたトンビとカラスの競り合いなど、川角はそれらのある印象的な一瞬をカメラのように切り取るのではなく、例えばその日の畑仕事全体、あるいは狩猟全体といった、その経験全体を描こうとしている。

 展覧会のタイトルの「呼吸をとめて」には、目的地へ向かう途中にあるまでの車の運転のように、普段無意識にコントロールしていることに目を向けるという、川角の現在の生活や制作に対する意志などが反映されている。

 川角は本展を通して、当たり前に可能と思われている見ること、描くことの奥底へ「呼吸をとめて」潜っていくことを、作品を鑑賞する私たちに求める。