EXHIBITIONS

牧歌礼讃/楽園憧憬 アンドレ・ボーシャン+藤田龍児

アンドレ・ボーシャン 川辺の花瓶の花 1946 個人蔵(ギャルリーためなが協力)

藤田龍児 デッカイ家 1986 星野画廊蔵

藤田龍児 軍艦アパート 1990 大阪市立美術館蔵

アンドレ・ボーシャン トゥールの大道薬売り 1944 個人蔵(ギャルリーためなが協力)

アンドレ・ボーシャン 芸術家たちの聖母 1948 個人蔵(ギャルリーためなが協力)

アンドレ・ボーシャン タルソスでアントニウスに会うクレオパトラ 1952 個人蔵

アンドレ・ボーシャン 窓 1944 個人蔵(ギャルリーためなが協力)

藤田龍児 古い花 1973 個人蔵

 東京ステーションギャラリーは、「牧歌礼讃 / 楽園憧憬 アンドレ・ボーシャン+藤田龍児」展を開催。異なる場所・時代に生き、ともに牧歌的で楽園のような風景を描いた2人の画家、アンドレ・ボーシャン(1873〜1958)と藤田龍児(1928〜2002)を紹介する。

 フランス中部のシャトー=ルノーで生まれたボーシャンは、アンリ・ルソー以来のもっとも優れた素朴派の画家ともいわれている。芸術とは無縁の環境で育ち苗木職人となったが、第一次世界大戦で徴兵され、除隊後、戦時中に習得した測地術をきっかけに興味を持った絵画を独学で描き始めた。1921年、サロン・ドートンヌに初入選。のちに建築家となるル・コルビュジエがいち早くその作品を評価したことでも知られている。晩年の1949年にはパリで200点以上の作品が並ぶ大回顧展が開催された。

 いっぽう藤田は京都で生まれ、大阪市立美術研究所で絵画を学んだ。1959年に美術文化展に初入選し、同協会の会員となり毎年出品を続けていた。しかし1976年から77年にかけて脳血栓を発症、半身不随となって利き手の自由を失う。いちどは画家の道を断念し、旧作のほとんどを廃棄した藤田だが、その後、懸命のリハビリで再起し、1981年に個展を開いて復活。以降は美術文化展といくつかのグループ展に参加、また毎年のように個展を開き、2002年に亡くなるまで精力的に作品を制作し続けた。

 人と自然が調和して暮らす世界への憧憬に満ちた2人の作品。ボーシャンは戦後に農園が破産、半ば自給自足の生活を送り、病気の妻を介護するなかで、そして藤田は大病による半身不随という苦境のなかで理想郷を夢想し、それぞれが過酷な状況にありながら、心を癒してくれるような牧歌的な作品群を生み出した。

 本展で紹介する2人の代表作を含むおよそ115点は、色やかたちを愛で、描かれた世界に浸るという、絵を見ることの喜びを思い起こさせてくれるだろう。