EXHIBITIONS

宋光翼(ソン・グワンイク)「紙物 -Jimul-」

2022.04.13 - 05.07

宋光翼 紙物 2019 パネルにミクストメディア H140×W110cm

 京都の現代美術 ⾋居では、宋光翼(ソン・グワンイク)の個展「紙物 -Jimul-」を開催する。

 宋は1950年韓国・⼤邱⽣まれ。啓明⼤学美術学科および同⼤学教育⼤学院美術教育科を卒業後、84年に九州産業⼤学⼤学院美術研究科を修了し、韓国と⽇本を中⼼に作品を発表。繊細で巧みな技術によって韓紙を造形的な作品に昇華させ、絵画や彫刻の既成概念に挑戦する⾰新的なアプローチをとっている。

 宋は、韓国で1000年以上前からつくられてきた⼿漉き紙の韓紙(ハンジ)に強い関心を持ち、⾃⾝の作品に「紙物(ジムル)」というタイトルを名付けている。韓紙について作家は次のように語る。「私は、空間性や光の屈折、透光性や空間間の浸透性を明らかにしたい。楮(コウゾ)でできた韓紙は、呼吸し、ささやくような素材である。それは⽬に⾒え、⽬に⾒えない形でコミュニケートする。韓紙はそういった点で、現代の紙とは異なっている」。

 古くから家屋の建具や経典などの書籍に使⽤されてきた韓紙は、丈夫で強い⽣命⼒を持ちながらも柔軟性に富み加⼯性にも優れているという性質を持つ。こうした材料の特徴的な性質を際⽴たせ⼿漉き紙としての⾵合いを⽣かすため、宋の作品の彩⾊は紙の表ではなく裏⾯から施されており、繊維によるインクのむらはそのまま残されている。また着⾊後の紙は作家⾃⾝の⼿でちぎられ、折り曲げられて、画⾯を構成する1ピースとなる。そして画⾯上に⽴ち現れるパターンは、韓国の伝統的な窓枠や、⾼麗⼋万⼤蔵経(韓国・海印寺に保存されている⼋万枚もの仏経典の版⽊)の並んだ様⼦、イスラム圏や中国の幾何学的な装飾模様などから影響を受けたものだという。

 京都初個展となる本展では、2018年から21年に制作された作品計9点を展⽰する。

 1枚の韓紙がつくられるまで数多くの⼯程と⻑い時間を経るように、宋の作品も⾮常に繊細な動作の繰り返しで⽣み出されている。作家の意識と⾝体の両⽅を注ぎ込まれるその過程のなかで、韓紙はたんなる素材を超え、作家の⽣そのもの、存在の真理を表現するものとなる。パネルの上に幾何学的に組み上げられた韓紙の1枚1枚が互いに共鳴し合い、幾重にも緻密に構成されたその連なりは、視点の置き⽅や展⽰空間と作⽤することで、無限の線や⾯へと変化して深く多様な響きを放つ。