EXHIBITIONS

YURIKA KINOSHITA「SKETCH」

2022.04.09 - 04.28

展示イメージ

展示イメージ

 MARGINでは、木下友梨香の個展「SKETCH」を開催する。4月28日まで。

 木下は佐賀県出身、東京を拠点に活動。京都造形大学を経て武蔵野美術大学を卒業。花農家で育った生い立ちをもとに、花や植物を抽象表現した作品を制作している。密集して存在する花や植物を描き、自然を目の前にした時のような瞑想を生活のなかに提示する。個展やグループ展、ファッションブランドとのコラボレーションなど、幅広く活動している。

 佐賀の花農家で育ち、幼少期から常に花や植物に囲まれた環境で過ごしてきた木下は、これまでのキャリアを通じて、花や植物をモチーフに幼い頃の記憶をスケッチするように作品を手がけてきた。抽象表現主義の影響を受けながら、日々生きていくなかで霞んでいく視覚的な記憶を通じて過去と現在を行き来し、作品に落とし込んでいる。

 本展では、アルペングループの全国30店舗とECにて販売されるコラボレーションアイテムの発表と合わせて、新作のペインティング約20点を展示する。

 これまで、とりわけ密集して群生する植物を俯瞰的な視点からキャンバスに描き、中心を持たないオールオーバーな構図に重きを置いてきた木下。今回の展示では、より近接した視点で対象を描くことで、余白を意識した画面をつくり上げた。作家自身にとって花や植物は自己の感情と対話するきっかけでもあり、そうしてつくられた作品は一貫して、それらを目にした時に一瞬現れた心の変化や衝撃といった記憶を追体験するように表現している。

 また木下は支持体を床に置き、特殊なペンキを使って素手で描くスタイルで制作。手で描くという行為は作家にとって、植物が持つ自由で有機的な動きという要素を表現できるというだけでなく、視覚的なイメージをキャンバスに落とし込むうえで必要な対話であり、身体感覚の拡張ともいえる。ペンキが持つ液体特有の自由な振る舞いを許容しながらも、あくまでその流動性の手綱を握って制御下に収める。その作業工程は、霧散していく曖昧な記憶の断片を意識的に手繰り寄せていく作業と相似の関係にあるといえそうだ。

 本展で発表される作品は、アルペングループのスポーツブランドTIGORAとのコラボプロジェクト「YURIKA KINOSHITA × TIGORA」として、Tシャツのデザインに採用されたアートワークと同様のシリーズ作品。木下がデフォルメして描く活き活きとした花や植物から感じる生命力は、スポーツが持つ躍動感にも通じるものがある。