モダン・プリンツ コレクションにみる世界の版画

　和歌山県立近代美術館が企画展「モダン・プリンツ コレクションにみる世界の版画」を開催する。

　版画は、図や文字などのイメージを複製するための技術を用いた表現であり、現在では技術の発達と解釈の多様化によって、その表現は広がりを見せている。技術自体の歴史は古く、日本には仏教伝来とともに流入し、西洋でもキリスト教の布教によって伝播した。そしてその表現は、さらに近代以降、複製の役割を超えて大きく花開いた。

　本展のタイトル「モダン・プリンツ」とは、近代版画という意味でありながら、新たな表現を獲得した「美術作品としての版画」そのものを指す。

　和歌山県立近代美術館は、版画についての収集や展示、また調査研究に力を入れてきた。それは和歌山が多くの版画家を輩出してきたことにはじまり、また同館が対象とする近代美術の展開に、版画が大きな役割を果たしていたこととも関わっている。

　本展では、同館の20世紀西洋版画コレクションを中心に、日本の近代版画にも影響を与えたエドヴァルド・ムンク、西洋が日本の版画と出会った時代を代表するエミール・オルリクとその周辺、パブロ・ピカソの代表作やアンリ・マティスがその晩年に新たな表現として開拓した切り絵のステンシル作品、そしてアメリカの戦後美術を支えた版画工房と画家の共同作業など、近代版画の多様な側面を紹介し、版画を通じて近代の意味を考える。

　出展作家は、アンリ・マティス、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック、オディロン・ルドン、エミール・オルリク、パウル・クレー、ヴァルター・クレム、ワシリー・カンディンスキー、ジョルジュ・ルオー、エドヴァルド・ムンク、フィンセント・ファン・ゴッホ、ジョセフ・アルバース、マックス・クリンガー、パブロ・ピカソ、ジョアン・ミロ、アンディ・ウォーホル、ジャスパー・ジョーンズ、ロバート・ラウシェンバーグ、アド・ラインハート、ロバート・マンゴールドなど。