EXHIBITIONS

井上雅之展 ―多摩美術大学退職記念―

井上雅之 H-221 2022

 ギャルリー東京ユマニテは、「井上雅之展 -多摩美術大学退職記念-」を開催している。

 井上は1957年神戸市生まれ。多摩美術大学大学院美術研究科修士課程を修了後、80年代から陶を素材に立体作品の制作を試み、国内外の展覧会で発表してきた。多くの美術館などに作品がコレクションされ、また2017年には「第24回日本陶芸展」で大賞を受賞するなど、現在も精力的に制作・活動している。

 土を捏ね焼しめて生成される陶は、古来、用の美の器として使われてきたが、井上はその身近な素材でいくつものパーツを組み上げ構成し、大規模なかたちをつくり上げるという新たな手法を確立した。陶という自然の力と自身の身体を通して生成される強固な素材で、様々なかたちを立ち上げようとしている。また井上は制作の傍ら、1998年から母校である多摩美術大学工芸科で後進を指導。2023年をもって退職となり、今回は退職記念の展示となる。

 井上にとって3年ぶりの個展ともなる本展は、いまにも動き出しそうな生き物を彷彿とさせる2メートルもの巨大な作品を中心に、段ボールでつくられたマケットなども含めて展示している。

 さらに今年6月からは、茨城県陶芸美術館にて学生時代に制作した初期作品から最新作までが揃う回顧展「井上雅之 描くように造る」(6月11日〜8月28日)も予定している。

「自身の成したことを十全に俯瞰することは叶いませんが、振り返る機会を得ています。20代半ばにロクロと出会って始めた仕事と、40年余りの時を経て眼前にある作品が根源的には同様、同質であると実感しています。素材というか、物質というか目の前にある存在に誘われ、それへの感応の形象化を続けています(井上雅之))」。