EXHIBITIONS

石井海音×野澤梓×永田優美による新作展示「かわいい。とは何か。」

左から、石井海音《Message》、野澤梓《portrait no.10》、永田優美《唐獅子図・momo chan》

石井海音 Message

野澤梓 portrait no.10

永田優美 唐獅子図・momo chan

「かわいい」に真摯に向き合い制作を行う3作家、石井海音、野澤梓、永田優美による新作展示「かわいい。とは何か。」が開催される。本展は、銀座 蔦屋書店5周年記念企画展示のひとつ。

 石井海音は油彩、野澤梓はマンガのスタイルをベースにしたアクリル、そして永田優美は日本画を通して、かわいいを追求し表現する注目のアーティストたちだ。3人の作品は、誰かのための「かわいさ(女の子の客体化)」を追求しているのではなく、自らがかわいいと感じ考える自分のための「かわいさ」を主体的に、真剣に追及している。

 石井の作品は、幼い頃から描いてきた絵や日常の延長線上である作家の個人的経験が多くのモチーフとして描かれている。「かわいい」を意識して描かれる独自のキャラクターに加え、線づかいも魅力。構図は2次元的な構成ながら、画中画や、窓、鏡、瞳といった別の世界へ広がる可能性を秘めたモチーフ、時にはレイヤーとして重ねて描かれる線による、多層的な空間の広がりや時間の重なりなど、3次元、4次元的な印象を受ける絵画を制作している。

 野澤が描く少⼥の輪郭は、⽩い線で描かれ、それ以外の線は⿊、またはブルー、ピンクなどのパステルカラーで縁取られている。⼿描きであることを強調するかのように、不安定な軌跡で少⼥の輪郭をなぞった作品は、落書きしたプリクラを⼿帳へ貼り、さらに⼿描きでデコレーションを重ねるという00世代を中⼼に、多くの世代に懐かしいカルチャーを連想させる。ノスタルジックでセンチメンタルなイメージを内包する独特な趣を重ねて、唯⼀無⼆の作品に仕上げている。

 永田作品に登場する女の子たちは、作家自身を投影しており、永田が着用したい服装、とってみたいポーズを作品のなかで展開している。自らのすべてを描くことを厭いながらも、支持体の上に余すところなく広げ、日本美術の支持体や絵具、技法をもって、永田の思う「かわいい」を追求している。時に登場する水玉模様は、女の子または女性の象徴的な要素として描かれもしている。また、永田は作品の図的な構成にも重きを置いており、日本絵画における構図の再構築を試みている。

 本展では、石井は2点の油彩作品と、これまでにない規模で13点のドローイング作品を一挙公開する。さらに野澤は、新作のポートレイトシリーズ3点を発表。永田の作品は、風神雷神図屛風を想起させる新作をはじめ9点が展示される。

 なお作品の販売は、銀座 蔦屋書店の店頭および、アートのオンラインマーケットプレイス「OIL by 美術手帖」にて行う。