EXHIBITIONS

中岡真珠美「窓景」

中岡真珠美 Fenestra -昼下がり- 2022

中岡真珠美 Fenestra -角の木- 2022

 中岡真珠美の個展「窓景」が開催される。アートフロントギャラリーでは3年ぶりとなる展示。

 中岡は1978年京都府生まれ。京都市立芸術大学大学院美術研究科修了。東京オペラシティ アートギャラリーの「project N」での個展(2005)や「VOCA展」佳作賞(2007)で一躍注目され、以後、数々の賞を受賞。タイでのレジデンス制作などを通じて作品の幅を広げ、またホテルといった商業施設にも作品を提供している。

 日常生活で気になる風景を切り取り、柔らかな色や有機的なフォルムに読み替えるスタイルで定評のある中岡。これまでは桂離宮や原爆ドームなど、実際にある建物の窓をモチーフにして、その内と外を隔てる境界としての窓とその周辺の風景を描いてきた。

  前回展では、100点のドローイングからなる作品を壁面に掛けて発表。モチーフから絵画への距離が一方通行ではなく、相互方向に関係しているという作品をつくりたいという思いから、モチーフを恣意的に動かしたり造形したりできる、室内画がメインだった。本展「窓景」では、ギャラリーのなかから家の窓越しのように絵を見られる空間をつくり出す。

 描かれるモチーフは、窓とその外側に広がる風景、室内に置かれた静物など身近な事物。それらが重層的に重なり合い、中岡独特のレイヤーが生み出される。いま作家が課題としている、「キャバスにはみえない部分、いわゆる死角があって、描いていないところも絵の中では繋がって想像できる。描く側からは見えない部分があることを想起させるような絵画空間」を、キャンバスの配置や設置方法を工夫することで体験しうる空間に挑戦する。

 日本の絵巻物に描かれているような吹き抜け屋台の描写が建築の外と内がつながり、薄い簾を通して奥性を感じさせるように、中岡の作品群もまた、内と外の曖昧な境界を通じて見る人をその先にある世界へと誘うだろう。