EXHIBITIONS

いつかは世の中の傘

神農理恵、日原聖子、水上愛美、若林菜穂

2022.04.02 - 05.01

日原聖子 友人の子どもと描いた絵 2022

 TALION GALLERYではグループ展「いつかは世の中の傘」を開催。神農理恵、日原聖子、水上愛美、若林菜穂のアーティスト4名が参加する。

 鉄やコンクリートブロックなどの素材と樹脂や着彩を組み合わせて制作を行う神農理恵は、即興的に素材を裁断、結合、変形することで立体をかたちづくっている。物質固有のテクスチャーによる無数の重ね合わせの上に、軽やかな色感や形状を取り込み、堅くやわらかで、繊細かつ荒々しいといった両義的なイメージを浮かび上がらせる。

 プラハ美術アカデミーを修了し、現在チェコを拠点に制作を行う日原聖子は、周囲の人々との対話や関係性を制作の起点に、他者の存在を織り交ぜ留める手段として糸や布、ドローイングを使った作品を制作。人の営みのなかの儀礼や共感性に着目し、文化人類学的な見地やアクションアートの文脈から考察を加えるなど、横断的なアプローチによって発表を続けている。

 遠く離れた砂漠の砂を混ぜたペーストを塗り重ねるなど、水上愛美は自身の絵を何層も塗りつぶして上書きを加えることで、絵画のなかに複層的な時間と物語を封じ込めようとしてきた。伝承や歴史上の逸話などを下敷きにしながら換骨奪胎された物語は、数千年後の未来に向けた贈り物として描かれている。

 若林菜穂は、撮りためた写真やカラーペーパーを用いてコラージュをつくり、身体を経由して絵画へと置き換えることで制作を行う。印刷物のざらつきやディスプレイ上の明度、そして作家の記憶の断片を混ぜ合わせつつ描かれる作品は、現実とは切り離された所在無さとともに、それを見る者の記憶の在りかに直接触れるかのような共感覚的なモチーフに満ちている。

 本展タイトル「いつかは世の中の傘」は、川内康範が作詞した流行歌の歌詞の一節に由来したもの。「世の中の傘とは何か」という問いをめぐって、私的な行為や関係性のつながりが、社会やその時代をおおう皮膜となる連環の開き、あるいは裂け目を主題として構成される。