EXHIBITIONS

山本捷平「Calcite on Myth: Myth」

Ritsuki Fujisaki Gallery
2022.03.11 - 04.03

山本捷平 Calcite on Myth -sleeping Adonis- 2022

 東⽇本橋に新たな現代美術のギャラリー、Ritsuki Fujisaki Galleryがオープン。こけら落としは新進気鋭アーティスト・⼭本捷平の個展「Calcite on Myth: Myth」を開催する。

 Ritsuki Fujisaki Galleryは国内外の若⼿現代アーティストを紹介する現代美術のギャラリー。ギャラリストの藤崎律希と同世代である20〜30代の新進気鋭のアーティストの展⽰をメインとして、国内に限らず、アメリカ、イギリスに代表される諸外国で活躍するアーティストの展⽰を予定している。

 最初の展示では、アワード受賞や国外での作品発表など、近年ますます注⽬される若⼿作家・⼭本捷平が待望の新シリーズを公開する。

 山本は1994年神奈川県生まれ。Adobe Photoshopなどの画像編集ソフトを使用したシミュレーション(計画)から制作を始め、抽象的な画面の上に図像や記号をローラーで反復させる作品で知られてきた。自作のローラーによる反復は、シミュレーションを裏切る一回性を作品にもたらすものであり、山本のこの制作方法は、図像や記号といった表象全般が電子的な操作によって容易に複製される現代の状況を所与のものとしながら、その一部をアナログ化することで、イメージの反復が氾濫する各プロセスのただなかにある物質性を浮かび上がらせる。

 本展では発表される最新シリーズ「Calcite on Myth」は、オンラインで取得した神話的モチーフの彫像の写真データを複写した平面の上に、方解石(calcite)を含ませた絵具をローラーで反復させたもの。過去の作品では地図の「地」と「図」が反転したかのような構造になっていたが、今回のシリーズでは、過去作での「地」の側にあった抽象的な面が、図像や記号にとって代わるように手前に移動し、彫刻の図像は「地」の側へと後退している。そして彫刻作品の姿を覆う白い絵具には、大理石のもととなる鉱物・方解石が混ぜこまれ、独特のザラつきを実現している。

 鑑賞者は山本の作品を見る時、画面全体の構図や図像の反復から作家によってコントロールされた印象を受け取り、いっぽう画面の細部に目を向けるときには、ローラーの回転が残していった痕跡を味わうこととなる。反復され減衰していく真っ白な絵具と方解石のつくり出す質感と、その向こう側の「神話」を覆う「Calcite on Myth」シリーズが投げかけてくる問いを会場で体感してほしい。