EXHIBITIONS

篠原勝之「空っぽ」展

© Katsuyuki Shinohara

 Galerie LIBRAIRIE6 / シス書店では、篠原勝之による「空っぽ」展を開催する。「鉄のゲージツ家」を宣言した作家にとって長く続いた鉄の時代から、土器の時代に移り初めての展示となる。

 篠原は1942年生まれ、札幌出身。鉄の街・室蘭で育つ。高校卒業前に家出し上京。武蔵野美術大学を中退後、グラフィックデザイナーとして広告制作会社に数年勤務し、退職後はサラリーマンと決別するため自らスキンヘッドに。日雇いのアルバイトをしながら挿絵画家、絵本作家として活動し、73年~79年にかけては「状況劇場」のポスター・舞台美術を担当する。81年、エッセイ『人生はデーヤモンド』で注目を集める。

 85年、都心のビル解体現場で瓦礫から剥きだしになった鉄の姿に衝撃を受け、「鉄のゲージツ家」を宣言、スクラップ鉄を素材に作品を精力的に制作。95年に山梨県北杜市にキューポラ炉を備えた作業場を構える。光・風・土・水といった自然のエネルギーに呼応するダイナミックな造形は国内外で展示・常設されている。

「kumaさん」の愛称でも知られる篠原。本展では、土くれとkumaさんの手で徒然に捏ねて焼かれた「空っぽ」約30点に、和紙に描いた作品10点を展示する。なおオンライン展覧会は、会期初日の3月5日 13:00より公開される。

「『空っぽ』鉄の作業場を処分して作業場の庭の蓮池も埋め戻し、素手でひと掬いした最後の粘土質の土くれを捏ねた。

何かを作ろうというでもなく、ただ土の感触を弄んでいた。ヒトの掌や腕の構造が内側へ向っているからなのか、土くれは徐々に球体に近づいていく。縄文人も水を掬い飲む時は、両掌を合わせ盌型にしたのだろうか。土くれ球を眺めながら骨組みに潜むジカンの隔たりを想い、ド真ん中に突き立てた両の親指を引き抜くと、オレの指が空っぽのカタチになった。他の指で押し広げながら起ち上げていると赤ん坊のアタマほどの空っぽの盌が出来あがった。オレの土器ジダイの始まりだった(篠原勝之)」。