The Beginning of Art Photography 写真をアートにした男−石原悦郎コレクション

　伝説のギャラリスト・石原悦郎の軌跡と希少なコレクションを紹介する「The Beginning of Art Photography 写真をアートにした男」展が、銀座 蔦屋書店（店内アートエディションコーナーショーケース）で開催される。

　石原悦郎は、1978年に日本橋室町にて日本で最初のコマーシャル・フォト・ギャラリー「ZEIT-FOTO SALON」を創設したギャラリスト。石原は写真の芸術性にいち早く気づき写真画廊を創設したが、開廊当時の国内では、写真をアートとして扱うことはまだ一般的ではなかった。

　アンリ・カルティエ=ブレッソン、ブラッサイ、ロべール・ドアノーなどの世界的巨匠らとパリで交流した石原は、直接プリントを買い付けては日本で個展を開くことで、オリジナル・プリントの価値を根付かせていった。日本人作家の発掘にも尽力し、植田正治や荒木経惟、森山大道を世界に発信するとともに、畠山直哉、オノデラユキといった、のちに世界的に活躍する写真家たちを見出した。

　85年には国内初となる写真美術館「つくば写真美術館」を設立し、写真のキュレーターや評論家といった人材も育んだ。石原は、今日のように写真家がアーティストとして活動し、写真が「アート」として受容され、コレクションされる写真の価値と歴史を語る上で欠かすことのできない人物のひとりだ。

　石原の活動と先駆性にフォーカスする今回の展示では、ZEIT-FOTO kunitachiの協力のもと、石原のコレクションからウジェーヌ・アジェやアンリ・カルティエ=ブレッソン、アンドレ・ケルテス、ビル・ブラントら、世界の巨匠たちの希少なオリジナル・プリント作品を展示・販売する。

　現像の名手と知られるピエール・ガスマンが手がけた珠玉のプリントの数々を展覧するとともに、石原とツァイト・フォト・サロン アーカイブ プロジェクトの協力のもと、その軌跡を記録したポラロイド写真、同時代のアートシーンの躍動を伝える安齊重男のフォトジンなど、希少なアーカイヴ資料を公開する。

　さらに会場では、石原の生涯から日本写真史を立体的にとらえた書籍『写真をアートにした男』の著者である日本写真史研究家・粟生田弓（あおた・ゆみ）による、アートとしての写真の見方やその価値を解くテキストを紹介する。