EXHIBITIONS

常設展Ⅲ

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安藤裕美 京都のホテルで「白い巨塔」を見るシエニーチュアンと梅津 2021

おバイトがある日のわきもとの1日(【パープルームTV】第135回 2020年代のアートを考えちゃおっかな!Part1より)

 梅津庸一率いるパープルームが運営するパープルームギャラリーでは「常設展Ⅲ」を開催している。本展はコロナ禍の初期にあたる2020年に行った「常設展」に続く第3弾。

 パープルームギャラリーの「常設展」は、コロナ禍とその影響を踏まえ、「美術」「展覧会」とは何かを改めて考えるもの。2020年4月、5月の緊急事態宣言下に2度にわたるグループ展を開催した。

 コロナ禍が美術、とりわけ「展覧会」に大きく影響を及ぼしたように、オルタナティブな活動を展開する集団、パープルームにとってもコロナ禍で受けた影響は甚大だったと言う。パープルームギャラリーの隣に店を構えパープルームと親交が深い「みどり寿司」から客足が遠のいたこと、パープルームのメンバーのひとり、わきもとさきのアルバイト先が時短営業になったことや、梅津が企画していた日本橋三越での展覧会の2度にわたる延期などが挙げられる。また梅津は、様々な助成や支援がもたらされるいっぽう、ポスト・コロナにおいて現代アーティストたちが次のビジョンの提示を期待されることに疑問を持っていると言う。

 パープルームが思うコロナ時代のアートとは「常に感染のリスクを負いながらもそれを受け入れること」。メンバー一同が、美術をあくまでも日常の営みの延長としてとらえ、「『ポスト・コロナ』のような耳障りのいいキャッチフレーズを掲げることなく、飲食店業を始めとする市民の営みと同じ地平からコロナ時代のアートについて考えたい」としている。そしてパープルームが、フリーランスのアーティストと日雇い労働者兼アーティストの寄合所帯であるからこそ、美術とは何かを体現できるはずだと考えている。

 本展の参加アーティストは、パープルームの日常を絵画、マンガ、アニメーションでとらえる安藤裕美、昨年は六古窯のひとつである信楽に滞在し、とくに作陶に勤しんでいる梅津庸一、コロナ禍におけるアートバブルに対し、自らの立ち位置を再確認・自己言及したファウンド・オブジェの新作を発表するシエニーチュアン、生活と労働を制作の主軸とし、大きな変化のなかで出品作《せいかつ用担架》(2021)を手がけたわきもとさき、最近はアートへの関心を失いつつもパープルームや身の回りの環境にいま一度「ゲーム」を見出し、再起動する様子をドローイングにしたアラン、コロナ禍の影響で派遣切りに遭ったことを機にアートの道を志して制作する齊藤孝尚、りんごといった、なんの変哲もない静物画に宿る「おかしさ」を描く新関創之介の7名。