EXHIBITIONS

アントワン・ダガタ展「Virus」

2022.02.03 - 03.06

アントワン・ダガタ VIRUS 2020 © Antoine dʼAgata Courtesy of MEM

アントワン・ダガタ VIRUS 2020 © Antoine dʼAgata, Courtesy of MEM

 MEMで、アントワン・ダガタの個展「Virus」が開催される。「第14回恵比寿映像祭『スペクタクル後 AFTER THE SPECTACLE』」(2月4日~20日)地域連携プログラムの参加企画展。

 ダガタは1961年フランス・マルセイユ⽣まれ。アンテルナシオナル・シチュアシオニストの運動に⼤きな影響を受ける。83年にフランスを離れ、10年間、ヨーロッパや中⽶、アメリカなど世界各地を放浪。90年にニューヨークのICP(国際写真センター)でラリー・クラークやナン・ゴールディンから写真を学んだ。91〜92年、マグナムのニューヨークオフィスにて久保⽥博⼆らのアシスタントとして従事。93年にフランスに帰国後、家庭を持ち、⽣活のために4年ほど写真から離れるが、その後活動を再開させた。

 ダガタはこれまで、撮影現場になるコミュニティに⾃⾝が関与することを重要視してきた。被写体になる⼈たちと関係を結びともに⽣活するからこそ、撮影はしばしば⻑期におよぶ。世界の様々な場所を移動しながら、複数の現場を⼿がけ、写真や映像作品にまとめた作品を、出版、映画上映、展覧会などで展開している。

 今回展示される「VIRUS(ウイルス)」は、2020年3⽉17⽇、フランスでロックダウンが始まったタイミングで撮影を開始したプロジェクトだ。ダガタは、⼈がほとんどいなくなった路上や検査のために並ぶ⼈々、病院の内部などを、被写体の温度の分布を⾊によって表現するサーモグラフィーで撮影。撮影は同年5⽉中旬までほぼ2ヶ⽉にわたって⾏われ、パリに加えて、タヴェルニーやマルセイユなどいくつかの都市の病院でも撮影を⾏ったという。

 本作は、病院のなかに患者が担ぎ込まれ治療されている現場を撮影したパートと、閑散とした街の路上を撮影したパートから構成され、内と外で進⾏するパンデミックをとらえている。閑散とした都市のなかで、ぽつんと途⽅に暮れたようにたたずむ⼈、⾝を寄せるところがない路上⽣活者、病院の集中治療室で横たわる患者、⼈も環境も建物も、ディテイルを奪われ、⾊彩のスペクトラムに還元されて表現されている。⾊によって熱が⾼い部分が⽰されるので、そこにウイルスが存在し、⼈間とウイルスが共存していることがわかる。ダガタは、ウイルスの存在をカメラに収めるため、サーモグラフィーによる撮影に⾏き着いた。

「VIRUS(ウイルス)」シリーズは、2020年7⽉にフランス・アルルで最初に展⽰され、その後メキシコ、スペイン、イタリア、中国、韓国、ウクライナに巡回した。同名作品の集出版、また映像作品もオンラインで公開されている。1〜2年のあいだに世界中、様々なメディアで展開されていった。本シリーズの個展は⽇本では初めての開催となる。