EXHIBITIONS

水上愛美「Catharsis Bed」 by 4649

2022.01.18 - 02.06

水上愛美 Waiting for a great day II 2021 Photo by Nirei Hiroshi

水上愛美 blindfold 2020 Photo by Nirei Hiroshi

水上愛美 2sun 2moon 2021

水上愛美 sweet dream 2021 Photo by Nirei Hiroshi

水上愛美 Mansion of hapiness 2021 Photo by Nirei Hiroshi

 水上愛美(みずかみ・えみ)の個展「Catharsis Bed」がCADAN有楽町で開催される。東京・巣鴨を拠点とする4649(フォーシックスフォーナイン)による企画。

 水上は1992年生まれ、東京を拠点に活動する画家。2017年多摩美術大学卒業。主な展覧会に「Dear Sentiment」(TOKAS本郷、東京、2021)、「Paintings for Stranger」(同、東京、2020)、4649 at Pina(Pina、ウィーン、2020)、「底流 / Large eddy」 (TWS渋谷、東京、2016)など。2022年にはno gallery(ニューヨーク)でのグループ展や、「VOCA展 2022」(上野の森美術館、東京)などに参加予定だ。

 本展は、2022年1月に4649で開催される、水上の個展と同時に発刊する作品集『catharsis bed』(oar press)についての展覧会。

 水上は本作品集の制作にあたって、自作において取り組まれる題材の一部である、絵画の「裏と表」や「塗りつぶされて見えなくなった部分」などへの考察にまつわる実践を、書籍というメディアの特性に応用させるためにデザイナーや執筆者の協力のもと、様々な工夫をこらした。それらに基づき本展は、一般的な絵画のインスタレーションとは異なった方法で、水上の作品を鑑賞する機会をつくる試みのひとつとして公開される。

 一般的に絵画の制作過程では、絵具によるレイヤーが積み重なり増えていくことで完成へ向かうとされているが、水上は最終的に完成した絵画イメージのなかに含まれない、絵具に塗りつぶされたままの部分(=不可視のレイヤー)や、形態としての性質上クローズドな情報として扱われる絵画の裏側の面までもを作品の一部として鑑賞できる可能性に関心をもち、意図的にそうした要素を絵画のなかに取り入れている。

 こうした水上の絵画における経時的な事柄への関心は、画面の制作過程にまつわるミクロな事象から、主題に用いられる人物像とそれらにまつわる神話的・考古学的なモチーフを通じて、これまで地球上で人間が想像し、受け継いできたイメージをこの時代においてどのように表現し、伝達していくかというマクロな視点にまで及ぶ。

 水上の取り組みは、静止していると仮定されたイメージを網膜で享受する体験としての絵画ではなく、時間的な行為の集積であるオブジェとしての絵画であり、イマジネーションのなかで完成されるような相互作用的な体験としての絵画にまつわるものと言える。

 なお本展は、4649での個展(1月16日〜2月13日)との同時期開催となる。