山口聡一個展「Portrait」

　 EUKARYOTEでは、山口聡一の個展「Portrait」を開催する。会期は1月14日～2月6日。

　山口は1983年千葉県生まれ。2010年東京藝術大学大学院修了。学部在籍中に参加した「GEISAI#9」にて、金賞とhiromiyoshii賞を同時受賞し、08年の「モスクワビエンナーレ」や香港のアートフェアへの参加など、国内外で作品を発表してきた。

　近年は絵画の構造そのものをテーマに取り組んでおり、「Overlap of paint」のシリーズでは、1枚の絵が生まれる過程において、作者しか見ることのできなかった、あるいは見せることができなかった絵具の重なりを、山口の鮮やかな色彩感覚と緻密な手法によって解体・再構成し表現している。この取り組みは、画家が描く対象から受け取ったイメージや印象のニュアンスを残すために筆を走らせるスピード感、絵具の厚み、またタッチの方向性などに表れる身体感覚をとらえ直すことであり、テクニカルなことと内面的なことが強く結び付いている絵画の構造や、描く対象を通して自身の絵画感を再認識、再確認する行為でもあると作家は語っている。

　パンデミックにより、人同士の関わり方にも転換が起きた現在において、山口は、描き手と対象との関わりが強い「肖像画」そのものを「Overlap of paint」の新たなモチーフに据えた。描く対象と向かい合い、キャンバスとのあいだで途方もないやりとりを行う「人間が絵を描く」という行為について、山口が考察し軽やかに描き出す、現在の記録や形跡として楽しみたい。