諏訪敦

　「現実を忠実に再現する」という写実のテーゼを、多角的なアプローチで乗り越え、見ることの拡張を試みる画家の諏訪敦。

　これまで、超絶的な描写力で人物を写すだけでなく、対象とのコミュニケーションや綿密な取材と複眼的な考察によって社会的な背景や個のあり様を浮かび上がらせてきた。

　ドキュメンタリーの視点を持ち、観る者に問いかける作品が話題を呼び、2016年には諏訪の制作に迫った短編のドキュメンタリー映像「忘れられた人々の肖像 ～画家・諏訪敦 “満州難民”を描く～」（NHK ETV）が放映された。

　本展では、11年以降の平面作品を中心に展示。満州で亡くなった祖母の姿を描いた《HARBIN 1945 WINTER》を初めて本格的に展示するとともに、シリア・アレッポの銃撃戦で亡くなったジャーナリスト、山本美香の肖像画が並ぶ。