EXHIBITIONS
朝海陽子「touch」
無人島プロダクションでは、写真家・朝海陽子の個展「touch」を開催している。無人島プロダクションでの個展は約6年ぶり。
2020年、世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が起こり、日本も感染対策として社会的距離や三密を避けるなど、様々な境界が引かれた。16年から「モビリティ(移動性、流動性)」をテーマとした写真作品を撮り続けている朝海にとって、この移動制限は視線の転換点のひとつとなったと同時に、これまでのありふれた日常が「非日常」となり、新たに出現した移動のない「日常」の出来事に目を向けるようになったと言う。
本展は、ステイホームのなかで朝海が見ていた日常の景色を題材とした新作映像作品《Bubble》を起点に、コロナ禍に制作された新作の写真シリーズ「ヒグラシ」と、コロナ禍以前に撮影された「Meals」シリーズを配し、時間や空間の境界をまたぐように構成される。
「ヒグラシ」は、朝海の自宅近くの河川敷に毎夜花火をするために集まる人たちを観察し記録した写真。花火は日本の夏の風物詩であるとともに、鎮魂や疫病退散を目的として打ち上げられてきたという歴史がある。コロナ禍での新たな生活様式のなかで、行き場を制限された人々がマスクをした姿で花火に興じる姿は、人々の集いやつながりをより強く意識させ、まるで儀式を行っているかのようにも、また失われた日常を取り戻そうとするかのようにも見える。
他方、「Meals」は、朝海が食事の時間をテーマに、18年に人々の夕食後の風景を記録したもの。本シリーズは、気軽に他人の家に訪問することが困難となった現在、その人たちの置かれている環境や背景、関係性だけでなく、否応なしに増してゆく「ホーム」の存在をも映し出したと言えるだろう。
いま現在もソーシャルディスタンスの渦中にいる私たちにとって「touch」とは何か、本展の鑑賞を通して考える機会としたい。
2020年、世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が起こり、日本も感染対策として社会的距離や三密を避けるなど、様々な境界が引かれた。16年から「モビリティ(移動性、流動性)」をテーマとした写真作品を撮り続けている朝海にとって、この移動制限は視線の転換点のひとつとなったと同時に、これまでのありふれた日常が「非日常」となり、新たに出現した移動のない「日常」の出来事に目を向けるようになったと言う。
本展は、ステイホームのなかで朝海が見ていた日常の景色を題材とした新作映像作品《Bubble》を起点に、コロナ禍に制作された新作の写真シリーズ「ヒグラシ」と、コロナ禍以前に撮影された「Meals」シリーズを配し、時間や空間の境界をまたぐように構成される。
「ヒグラシ」は、朝海の自宅近くの河川敷に毎夜花火をするために集まる人たちを観察し記録した写真。花火は日本の夏の風物詩であるとともに、鎮魂や疫病退散を目的として打ち上げられてきたという歴史がある。コロナ禍での新たな生活様式のなかで、行き場を制限された人々がマスクをした姿で花火に興じる姿は、人々の集いやつながりをより強く意識させ、まるで儀式を行っているかのようにも、また失われた日常を取り戻そうとするかのようにも見える。
他方、「Meals」は、朝海が食事の時間をテーマに、18年に人々の夕食後の風景を記録したもの。本シリーズは、気軽に他人の家に訪問することが困難となった現在、その人たちの置かれている環境や背景、関係性だけでなく、否応なしに増してゆく「ホーム」の存在をも映し出したと言えるだろう。
いま現在もソーシャルディスタンスの渦中にいる私たちにとって「touch」とは何か、本展の鑑賞を通して考える機会としたい。


