EXHIBITIONS

狗巻賢二、中原浩大、毛利武士郎 – 村松画廊コレクションより

2021.12.14 - 2022.01.29

毛利武士郎 無題(大6 点シリーズ)9 1981

 Satoko Oe Contemporaryは、2009年に惜しまれつつ閉廊した村松画廊の協力を得て、展覧会「狗巻賢二、中原浩大、毛利武士郎 – 村松画廊コレクションより」を開催している。

 村松画廊は、銀座7丁目にあった村松時計店の付随施設として、戦前より画廊業務が始まった(正確な業務開始時は不明)とされ、その長い歴史のなかで、数々の名だたるアーティストの個展、企画展を開催してきた。

 老舗の村松画廊がどのようにアイデンティティを確立し、苦悩し、アーティストの伴走者として走り抜いてきたのか、本展は3名のアーティストに注目し、作品を展示することで、ひとつの画廊の使命、足跡まで感じ取ってもらえればとしている。

 狗巻賢二(1943〜)は、1960年代に空間に糸や針金を張り巡らせ来場者の規則的な動きを阻むような作品をいくつか発表。1970年開催の東京ビエンナーレ「人間と物質」展で立体作品を発表したのち、1970年代に入り、方眼紙を色鉛筆で塗り分ける作品を、その後は、几帳面にボールペンで線を引いたシリーズ、目を凝らさないと見えないほどの薄い水彩で塗り分けるシリーズなどの紙作品を制作しながら、1980年代からはキャンバス作品を発表している。いずれも単純で丁寧な繰り返しの行為、ルールのなかから生まれる結果を提示している。村松画廊での初個展は1969年。その後11度の個展を同画廊で開催している。

 中原浩大(1961〜)は、1980〜90年代に、彫刻の概念の拡張をはかる作品を、既製品を用いたりしながら様々なメディアで発表し、当時の美術界に衝撃を与えた。本展では、89年の村松画廊での初個展の際に発表した作品《ビリジアンアダプター》(豊田市美術館蔵)のエスキース作品など、2点のペーパーワークを展示する。

 毛利武士郎(1923〜2004)は、前衛彫刻界のスター作家でありながら、1964年以降、突然に発表をやめた。数年後には美術界と精神的のみならず物理的にも距離を置くべく富山に居を構え、一人ひっそりと制作に没頭。1990年代以降は、東京の自宅を売却した資金で幕張の工業見本市にて購入した最新ドリル、旋盤機器を約3000万円で購入し、彫刻をかたちづくる手の触覚を機械に委ね、コンピュータ操作をしながらステンレスの無垢材を掘り進めた作品を発表する。

 本展では、毛利による81年のレリーフ作品2点を展示。この時期の作品は、まるで埋葬するかのように石膏で何かが埋め込まれており、それらの残欠が表層に顔を出している。自己模倣をもっとも嫌った毛利が、過去の自らの手癖や仕事を葬るような作品シリーズであり、村松画廊では作家の死後2005年に個展を開催し、初期作品から晩年のステンレス作品までを紹介した。

 本展は、美術界と一定の距離を保ちながら、自らの仕事に執着し没頭したそれぞれの作家の作品を、ひとつの画廊の足跡とともに展覧する。企画協力は村松画廊、川島良子。