EXHIBITIONS

奈良美智と版画のなかの子どもたち

奈良美智 Life is Only One 2010

 町田市立国際版画美術館がミニ企画展「奈良美智と版画のなかの子どもたち」を開催している。

 奈良美智は1959年に青森県に生まれ、88年以後は留学、活動拠点として12年間ドイツで制作活動を行ってきた。日本のみならず欧米やアジア各地で個展が開かれ、世界の人々を魅了する日本を代表するアーティストのひとりだ。

 奈良は絵画やドローイング、陶器などの立体作品、大掛かりなインスタレーション、絵本など幅広いジャンルの創作を行っている。版画作品は2000年代初めに銅版画・リトグラフを手がけたのち、2010年代前半に木版画を発表。とくに木版画では彫りと刷りを職人に任せ、共同制作でつくり上げていく魅力を感じたと言う。

 その作品は、音楽やサブカルチャーなどポップ・カルチャーをアートの文脈に持ち込んだスタイルでも愛されているが、奈良が描く子供や動物はたんに「かわいい」だけの存在ではない。親しみやすさと神々しさ、無垢さと残酷さなど、人間がもつ多面性を感じさせ、私たちの創造力を刺激する。また近年では、穏やかで哲学的な表情を浮かべた子供の作品も発表。奈良が描く子供の肖像は未成熟で力を持たないからこそ、反骨精神にあふれ、権力構造に組み込まれない自由な存在であり続けている。

 本展では、同館に寄贈された奈良の版画作品10点を展示。あわせて、藤田嗣治、岸田劉生、相笠昌義、野田哲也、横尾忠則、村上暁人、金子國義、南桂子が手がけた子供が登場する版画作品も展示し、全29点の作品を紹介している。