EXHIBITIONS
狩野哲郎、志村信裕「Ambient Reflexion」
ユカ・ツルノ・ギャラリーは、狩野哲郎と志村信裕の2人展「Ambient Reflexion」を開催する。
狩野と志村はともに日常の身近な事物や現象を作品の素材として扱い、狩野は人間ではない存在やそれらの認識する世界を想像させるインスタレーションや彫刻を、志村は記憶や歴史を喚起するような映像インスタレーションを発表してきた。本展では、2人の独立した作品の特性を互いの所与の環境としてとらえることで、重なり影響し合う関係性から生まれる作品の新たな在り方が模索される。
狩野は1980年宮城県生まれ。2005年東京造形大学造形学部デザイン学科卒業。2007年同大学院造形研究科美術研究領域修士課程修了。他者としての鳥や植物の観察や内包を通して、人間の意図を超えて存在する風景の在り方や、人間の生活圏に生きる身近な生物の各々の知覚によって見出される世界の多様性を提示してきた。「一本のカシワの木が、多種多様なそれぞれの生物にとって変化にとんだ役割を果たしている」と提唱する生物学者フォン・ユクスキュルの「環世界」の概念をもとに制作してきた狩野は、作品の細部がある生物や存在によって知覚されることで固有性を獲得しながら、その細部がインスタレーションや彫刻作品としての全体性を生み出す複合的環境としての作品と世界の在り方を創造している。
また近年は、年月を重ねてきた素材や古物、自然のなかでエイジングした彫刻、屋外でヤケや経年変化した素材を作品の一部に取り入れている。月日の経過が価値と見なされず、すでに従来の機能や価値から逸脱している素材を取り入れた狩野の作品には、自然の力によって獲得されては変容し続ける複数的な世界認識の方法と世界観が同居する。
志村は1982年東京都生まれ。武蔵野美術大学大学院映像コース修了。現在、千葉県を拠点に活動。身の周りの事物の実写映像を様々な場所や素材に投影し、光や映像によって空間がもつ歴史や記憶を呼び起こすサイトスペシフィックな作品を多く手がけてきた。近年は、フィルムやドキュメンタリー映像の手法に取り組んだり、近代詩、民俗学、神話に着想を得たりすることで、固有の場所性にとらわれず、自然現象を文学的なアプローチと近接した映像インスタレーションとして作品化。とくに2019年に千葉県香取市の古民家へと制作の拠点を移し、家の周辺に広がる自然と向き合う時間が増えた志村は、自ずと過去の作家や詩人たちが試みた自然との対面に共感を寄せる。
今夏に開催されたKAAT神奈川芸術劇場での個展「游動」では、世界各地の月にまつわる神話や死生観と結びついた光や水が循環する世界観を表現するために、朧月、海月、雨、海辺の月影をモチーフとして選び、光と映像が織りなす抽象度の高い映像インスタレーションを発表した。
各々の独立した作品と、互いの作品をひとつの環境として見立てた共作で構成される本展「Ambient Reflexion」は、2人展でありながらも、互いに意識し合いながら作家として成長してきた2人のある種の共存した関係性が反映される。長時間をかけてつくられてきた作家個人の制作環境や取り組みを前提としながらも、各々の作品の特性が生み出す影響を認め合いながら、またその影響による侵食や変容を受けいれることで生み出される新たな関係性を試みる。
狩野と志村はともに日常の身近な事物や現象を作品の素材として扱い、狩野は人間ではない存在やそれらの認識する世界を想像させるインスタレーションや彫刻を、志村は記憶や歴史を喚起するような映像インスタレーションを発表してきた。本展では、2人の独立した作品の特性を互いの所与の環境としてとらえることで、重なり影響し合う関係性から生まれる作品の新たな在り方が模索される。
狩野は1980年宮城県生まれ。2005年東京造形大学造形学部デザイン学科卒業。2007年同大学院造形研究科美術研究領域修士課程修了。他者としての鳥や植物の観察や内包を通して、人間の意図を超えて存在する風景の在り方や、人間の生活圏に生きる身近な生物の各々の知覚によって見出される世界の多様性を提示してきた。「一本のカシワの木が、多種多様なそれぞれの生物にとって変化にとんだ役割を果たしている」と提唱する生物学者フォン・ユクスキュルの「環世界」の概念をもとに制作してきた狩野は、作品の細部がある生物や存在によって知覚されることで固有性を獲得しながら、その細部がインスタレーションや彫刻作品としての全体性を生み出す複合的環境としての作品と世界の在り方を創造している。
また近年は、年月を重ねてきた素材や古物、自然のなかでエイジングした彫刻、屋外でヤケや経年変化した素材を作品の一部に取り入れている。月日の経過が価値と見なされず、すでに従来の機能や価値から逸脱している素材を取り入れた狩野の作品には、自然の力によって獲得されては変容し続ける複数的な世界認識の方法と世界観が同居する。
志村は1982年東京都生まれ。武蔵野美術大学大学院映像コース修了。現在、千葉県を拠点に活動。身の周りの事物の実写映像を様々な場所や素材に投影し、光や映像によって空間がもつ歴史や記憶を呼び起こすサイトスペシフィックな作品を多く手がけてきた。近年は、フィルムやドキュメンタリー映像の手法に取り組んだり、近代詩、民俗学、神話に着想を得たりすることで、固有の場所性にとらわれず、自然現象を文学的なアプローチと近接した映像インスタレーションとして作品化。とくに2019年に千葉県香取市の古民家へと制作の拠点を移し、家の周辺に広がる自然と向き合う時間が増えた志村は、自ずと過去の作家や詩人たちが試みた自然との対面に共感を寄せる。
今夏に開催されたKAAT神奈川芸術劇場での個展「游動」では、世界各地の月にまつわる神話や死生観と結びついた光や水が循環する世界観を表現するために、朧月、海月、雨、海辺の月影をモチーフとして選び、光と映像が織りなす抽象度の高い映像インスタレーションを発表した。
各々の独立した作品と、互いの作品をひとつの環境として見立てた共作で構成される本展「Ambient Reflexion」は、2人展でありながらも、互いに意識し合いながら作家として成長してきた2人のある種の共存した関係性が反映される。長時間をかけてつくられてきた作家個人の制作環境や取り組みを前提としながらも、各々の作品の特性が生み出す影響を認め合いながら、またその影響による侵食や変容を受けいれることで生み出される新たな関係性を試みる。

