EXHIBITIONS

「Their collages」片山穣 / 徳永博子 / 湯浅万貴子

2021.11.12 - 11.28

上から、片山穣《Noah》(2021)、徳永博子《Mass_r_3》(2021)、湯浅万貴子《欠片①》(2021)

 s+artsでは、片山穣、徳永博子、湯浅万貴子によるグループ展「Their collages」を開催している。

「コラージュ」とは、フランス語で糊付けを意味する言葉であり、性質の異なる様々な素材を組み合わせることで構成する絵画技法のひとつ。本展では、発表の軸としている作品とは異なる手法の新作を含め、作家それぞれも素材のひとつととらえ制作した、作家同士のコラボレーション作品も発表する。自身以外のほか2人の作家をどう受け止め、作品に落とし込むのかなど、通常の制作とは異なる柔軟な思考と姿勢で取り組んだ展示となる。

 1985年、新潟県出身の片山穣は、ろうけつ染めに独自の技術を加えた染色技法で作品制作を行う作家。多くの制約が伴うなかで綿密に計画され、幾度にも繰り返される染色の作業工程と、それを成し遂げられる技術と器量によって、何層にも絵柄が重なり、繊細な作品の表情を出すことを可能にしている。本展で片山は、制作過程で使用する蝋を用いてのコラージュに取り組んだ。自身の作品においてなによりも作品のもつ空気感を大事にしているという片山は、何気ない風景を切り取り、蝋という身近な異物を画面上に用いることで空想の存在を同居させ、心地よいノイズが感じられる作品を制作した。

 徳永博子は1983年長崎県生まれ。アクリル板を丁寧に削り重ね合わせることで、浮遊感を持った作品を発表してきた。細やかな点と線の集まりは、氷の結晶のようにも感じられ、ストロークの「集積」と、その重なりから「知覚」されるものを制作のコンセプトとし、加えて近年では「始まり」を新たなテーマに、従来のボックス型の作品と並行して立体物の制作にも注力している。本展では、「凝り固まった感覚をもみほぐすマッサージのようだ」と徳永が例えるブリコラージュで制作された作品を発表。普段は全体のイメージを先に考え、計画的に材料を揃え構築していく作家が、全体ではなく、素材となる破片一点一点と向き合い「最高の破片」をつくるところから制作を始めた。これまでと異なる手順で作品に取り掛かることで、自由なかたちを生み出すことができ、発想が豊かになっていくと作家は語っている。

 1988年新潟県生まれの湯浅万貴子は、アクリル絵の具に純銀箔や色箔を用いて構成された背景に、人間の身体や木の根などのモチーフをデフォルメした点描画で表現する。無機質ながらも時の経過と共に硫化を続ける箔が形成する絵画空間と、私たちの身体を成り立たせている皮膚、血管、筋肉など、そのなかの細胞の集合体を点描の表現に重ね、生み出されたモチーフが絶妙に交わることで、湯浅が描く身体的フォルムの美はその繊細さを際立てているようだ。本展では、今年5月の個展から発表を始めたコラージュ作品を展開。様々な支持体に描かれる湯浅のドローイングや詩をひとつの画面に構成した。湯浅が普段描く緊張感のある点描作品に比べ、今作は緩やかな印象を持ちながらも、作家の哲学的な世界観が垣間見える作品群となる。