EXHIBITIONS

フィリア ― 今 道子

今道子 繭少女 2017 ゼラチン・シルバー・プリント 作家蔵 © Michiko Kon, Courtesy PGI

今道子 キャベツ氏 1981 ゼラチン・シルバー・プリント 作家蔵 © Michiko Kon, Courtesy PGI

今道子 蛸+メロン 1989 ゼラチン・シルバー・プリント 作家蔵 © Michiko Kon, Courtesy PGI

今道子 シスターバンビ 2017 ゼラチン・シルバー・プリント 作家蔵 © Michiko Kon, Courtesy PGI

今道子 シマウマのブーツ 1996 ポラロイド 作家蔵 © Michiko Kon, Courtesy PGI

 写真家・今道子(こん・みちこ)の日本の美術館では初となる個展「フィリア ― 今 道子」が神奈川県立近代美術館 鎌倉別館で開催される。

 今は1955年生まれ。創形美術学校で版画を学び、写真を用いたリトグラフなどで非現実的なイメージを追求するなかで、80年前後から本格的に写真の制作を開始。市場に並ぶ魚や野菜などの食材や、靴や帽子といった日常的なモノを素材にそれらを組み合わせたオブジェをつくり、自然光で撮影して印画紙に焼き付ける独自の手法を用いている。

 その精緻な構成と詩的喚起力に富んだモノクロームの世界は、最初の写真集『EAT』(1987)以来一貫しており、第16回木村伊兵衛写真賞受賞(1991)をはじめ、国内外で高い評価を得てきた。

 不可思議な関係で結ばれたモノたちが生み出す幻想的なイメージによって、しばしば「異色の作家」として語られる今だが、作家のまなざしにはひとたび断たれた生命に、束の間、魂を吹き込もうとする被写体への愛(フィリア)がうかがえる。

 本展では、鎌倉を拠点に40年にわたり制作してきた作家の軌跡を、初期の代表作《蛸+メロン》《キャベツ氏》から《繭少女》《シスターバンビ》まで、メキシコ国立写真美術館での個展(2017)以降の近作を含む約100点からたどる。

 出品作はモノクロ70余点とカラー7点、ポラロイド16点など。また新作《巫女》(2020)は初公開となる。