EXHIBITIONS

皆藤齋 個展「現れるのに勝手はない」

2021.11.20 - 12.19

皆藤齋 No excuses for showing up(Constellation of Kidnap) / 現れるのに勝手はない(人さらい座) 2021 © Itsuki Kaito

 LEESAYAは、注目の若手アーティスト・皆藤齋(かいとう・いつき)の個展「現れるのに勝手はない」を開催する。

 皆藤は1993年北海道札幌市生まれ。2019年に京都市立芸術大学大学院を修了。現在は東京を拠点に精力的に制作活動を行う。在学中より、第一期・第二期クマ財団奨学生に選ばれ、2017年にはCAF賞にノミネート。日本をはじめ、ヨーロッパや中国、韓国など国内外で作品を発表している。

 皆藤の作品は主にキャンバスに油彩で描かれており、不穏な雰囲気が漂いながらもビビットな色使いと一見、恣意的にもとれるモチーフの配置が印象的だ。描かれているモチーフは、顔のない男性や、奇妙な形の犬や虎、不思議なオーラを放つぬいぐるみなど様々だが、鋭く尖った爪のような器具や、ベルト、ハーネス、刃物など暴力を連想させるモチーフが一貫して画面に登場する。

 9歳頃からコンピュータで描いた絵をインターネットの掲示板に投稿していた皆藤だが、上手な絵を描くということには注力せず、むしろ社会生活では決して見ることのできないアンダーグラウンドコンテンツから多くの影響を受け、独自の世界観をつくり上げてきた。描くことで自己と向き合ってきた作家にとって、性的で非道徳的なイメージを扱うことは、社会に対する怒りや疑問をぶつけているわけではない。

 皆藤はアンチモラルや羞恥心を孕んだナルシシズムといった、多くの人の心に潜在的に存在する利己的な内面世界を表現することで、常識や社会性からは逸脱していたとしても、それ自体が救いになり得、同時に芸術そのものが同様の性質を持っていることを鑑賞者に気づかせる。

 本展では、星座や重なり合ったベルトの目など、無意識のうちに、受動的に意味のない様々なものから、メッセージを受け取ってしまう人の性に目を向けて制作した作品を展示。意図しない読み取りには深層心理が働いており、そこには経験や知識など、確固たる理由が作用している、言い訳のできないものだと作家は話す。皆藤が描く不思議なポットや、星座のようなモチーフのなかに、鑑賞者はそれぞれ異なるものを見出すことになるだろう。