EXHIBITIONS

石原友明展「蠅とフランケン」

2021.12.04 - 12.29

石原友明 I.S.M. ‒ 代替物 1 2021 © Tomoaki Ishihara Courtesy of MEM

 石原友明の3年ぶりとなる個展「蠅とフランケン」がMEMで開催される。会期は12月4日~29日。

 ⽯原は1959年⼤阪府⽣まれ。84年京都市⽴芸術⼤学美術学部⼤学院造形構想修了。80年代に写真やインスタレーションを含めた複合的な⼿法をもって登場し注⽬を集め、ヴェネチア・ビエンナーレの「アペルト88」へ参加や、栃⽊県⽴美術館(1998)、⻄宮市⼤⾕記念美術館(2004)で個展を開催するなど国内外で発表してきた。

 ⽯原は⻑年、様々な素材や⼿法を⽤いながら「⾃画像」に取り組んでおり、それは⾃⾝の⾝体を近代美術史でなぞりながら検証する試みでもあると言う。2016年に開催した「拡張⼦と鉱物と私。」では、⾃⾝の頭髪をデジタル化し、抽象絵画として再構成。頭髪のデータに新しい⾝体としてキャンバスを与え、石原のもうひとつの⾝体を示した。同じ個展で、⽯原は3Dスキャンした⾃⾝の⾝体をいくつかに切り分け、各部位 をスライス状の板を重ねることで⽴体として再構成し、その作品に《corpus(死体、集積)》という題名をつけた。

 本展「蠅とフランケン」はこの5年前のプロジェクトをさらに発展させたもの。「corpus」シリーズの新作は、3Dプリンタによって⼤型化された⾝体のパーツが直接出⼒され、無造作に積み上げられる。新しく与えられた⾝体は、展覧会名にあるように、狂気の科学者フランケンシュタインが、⼈間の死体をつなぎ合わせてつくり上げた⼈造⼈間の神話を思い起こさせ、また⽣きている死体に群がるかのように、蠅の死骸から写し取られたフォトグラムも「corpus」に寄り添うように展⽰される。そしてそこに、90年代より制作している⾝体の延⻑としての⾰の彫刻のシリーズ「Ectoplasm」が加わる。

 異形の彫刻「Ectoplasm」も同じく動物の死体から採取された⽪からつくられ、⽯原⾃⾝の⾝体に実際に「装着」される写真によってその使⽤⽅法が、ここでも死と⽣の接続が⽰される。作品はどれも⾝体と死のイメージに彩られているが、⽯原はそれらを、近代美術史が打ち⽴てた美学の残滓、モダニズムの死体だと言う。ゾンビとしての作品が、新たな⾝体を獲得して⾃ら⽴ち上がる時、未来へ向かうもうひとつの美術の地平もまた⽴ち上がる。