上田薫とリアルな絵画

　上田薫は、日本におけるスーパーリアリズムの第一人者として広く知られる画家。1985～93年にかけて、茨城大学で教授を務め茨城を制作拠点とした、同県ゆかりの画家でもある。

　 上田の代表作は、1970年代に発表した、割れたなま玉子の殻から中身が落ちる瞬間を描いた「なま玉子」シリーズ。ほかにも、スプーンですくいとられたアイスクリームや、シャボン玉、水の流れといった、身近なものの一瞬の姿をとらえてリアルに表現する作品で高く評価されてきた。

　上田は写真を利用して対象をクローズアップで描くことにより、肉眼による認識をはるかに凌ぐ視覚世界を表現し、その作品は見る者の知覚に揺さぶりをかけ、リアルをめぐる思索へと私たちを誘う。

　本展「上田薫とリアルな絵画」では、半世紀にわたる上田の仕事を代表的なシリーズによって振り返る。また、伊庭靖子や橋爪彩ら現代作家たちの作品をあわせて展示することで、リアルをめぐる豊かな絵画表現の世界を紹介する。