日原聖子 Circle in red / 吉野俊太郎 Peripeteia

　駒込倉庫で、アーティスト・日原聖子の個展「Circle in red」と、吉野俊太郎の個展「Peripeteia」が同時開催される。

　日原はこれまで近親者や友人、初対面の鑑賞者など、個人と個人の対面を中心に共同や共感について思考してきた。主にパフォーマンス的な手法やテキスタイルを中心に展開される制作プロセスではそのほとんどに他者が関わり、話すという行いが繰り返される。

　本展「Circle in red」では今日の遠隔地における共同や共感の在り方を思考するため、「装いについて」というテーマで複数の友人と対話を繰り返し、その共同から生まれたテキスト／テキスタイル／テクスチャーを並置させ、個人同士の、あるいは集団としての共感の可能性を提示する。

　吉野は、展示台座という要素を通じて「彫刻」の現れ方について思考してきた。これまで「操演」をキーワードにして、演劇や人形劇などの舞台芸術を参照した作品を発表しつつ、近年では舞台作品の演出などにも積極的に参加している。

　本展「Peripeteia」ではアリストテレスの悲劇論において重要な要素とされた「逆転（peripeteia）という概念を参照し、彫刻の現れうる舞台のその内幕に注目した展示を構成する。

　日原と吉野は、ともに他者存在との交信や装いという共通の関心を介して、今日におけるそれぞれの問題意識へアクセスする。