EXHIBITIONS

第73回 正倉院展

南倉 漆金薄絵盤 宮内庁正倉院事務所

北倉 杜家立成 宮内庁正倉院事務所

北倉 螺鈿紫檀阮咸 宮内庁正倉院事務所

北倉 螺鈿紫檀阮咸(背面) 宮内庁正倉院事務所

北倉 花鳥背八角鏡 宮内庁正倉院事務所

南倉 曝布彩絵半臂 宮内庁正倉院事務所

中倉 黒柿蘇芳染金絵長花形几 宮内庁正倉院事務所

北倉 茶地花樹鳳凰文﨟纈絁 宮内庁正倉院事務所

 奈良国立博物館が「第73回 正倉院展」を開催。奈良では25年ぶりの公開となる《螺鈿紫檀阮咸(らでんしたんのげんかん)》(円い胴の絃楽器)や、彩色文様が目にも鮮やかな《漆金薄絵盤(うるしきんぱくえのばん)》(蓮華形の香炉台)など、東大寺・正倉院を代表する宝物が出陳される。

 正倉院は、聖武天皇の遺愛の品々を中心とする約9000件の宝物をいまに伝えてきた。「正倉院展」はこれら正倉院宝物のなかから毎年60件ほどを選び公開する同館恒例の展覧会であり、今年も、楽器、調度品、染織品、仏具、文書・経巻など、正倉院宝物の全容をうかがえるような多彩なジャンルの品々が出陳され、宝物が織りなす豊かな世界を楽しむことができる。

 もとは東大寺の正倉(穀物などを収納する倉)だった正倉院。この東大寺における大仏の造立は、日本で仏教がますます盛んになった奈良時代を象徴する出来事であり、今年の「正倉院展」は、東大寺大仏の開眼法要で献納された品々がまとまって出陳される。

 見どころのひとつなるのが、今回初出陳の《茶地花樹鳳凰文﨟纈絁(ちゃじかじゅほうおうもんろうけちのあしぎぬ)》(文様染めの絹織物)。﨟纈染め(ろうけちぞめ、蠟[ろう]を防染剤(ぼうせんざい)として使う染色技法)の一種と考えられてきたが、これまでほとんど知られていなかった色染めの技法が使われていることが最近明らかにされ、当時の染色技術の多彩さをうかがわせる研究成果として注目を集めている。

 また、近年、宮内庁正倉院事務所で本格的な調査が行われた筆をはじめ、墨・硯(すずり)・紙といった文房具がまとまった点数出陳されるのも本展の大きな特徴。文書・経巻などに加え、文房具に注目することで、人々の知識の源泉となり、国の統治に欠かせない文書行政を支えた当時の書の文化に思いをはせる機会ともなる。