EXHIBITIONS

中世装飾写本&像刻|前川秀樹

2021.10.01 - 10.16
 MA2 Galleryでは、「中世装飾写本&像刻|前川秀樹」展を開催。本物に接する機会の少ない中世装飾写本の零葉(写本として綴じられていたページを切り取った紙葉)と、マルチアーティスト・前川秀樹による像刻を展示する。

 およそ13〜15世紀にかけて制作された手書きの作品を指す写本。本来は時祷書や祈祷書、典礼書、聖書など本のかたちになっていたが、のちにばらばらにされて美術品として鑑賞されるようになった。写本のうち、祈りの言葉が書かれる時祷書(じとうしょ)は、ペストが流行した14世紀ヨーロッパにあって、死が人々の間近にあったことから多くの人に読まれた。

 写本は「紙上の宝石」とも称され、羊皮紙上のレタリングやミニアチュール、細部に施された模様が美しい。また中世の人々は、想像力豊かに空想上の動物や植物、奇妙な生き物などを描き、文言が読めなくても、文字の美しさや絵のおもしろさも写本の魅力のひとつとなっている。

 今回展示される中世装飾写本は、およそ13〜15世紀にイギリス、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー(フランダース地方)の写字室で書かれた様々なタイプの作品を揃え、すべて壁にかけて楽しめるように各作品に合った額装を施している。

 また本展では、彫刻を中心にドローイング、オブジェや家具、小説まで手がける作家・前川秀樹の像刻十数点が並び、中世装飾写本と呼応して、見る者をまったく別の場所へと誘う。

 前川は1967年淡路島生まれ。武蔵野美術大学油絵学科卒業。1995年に「KAJIMA彫刻コンクール」で金賞を受賞。96年に武蔵野美術大学パリ賞を受賞し、渡仏。帰国後は、コマーシャルギャラリーにて彫刻、平面作品を発表し、現在に至る。前川は木と対話し、樹木から刻み出した自分の作品を「像刻」と呼ぶ。物語をまとった像刻たちは見る者に語りかけ、静かに揺さぶる。

 本展を企画したMA2 Galleryは、中世装飾写本と前川の像刻の持つ魅力、この2つの組み合わせの醸し出す清浄な雰囲気が、未来を明るく照らす「光」となることを願う。