EXHIBITIONS

金光男 個展「グッド・バイ・マイ・ラブ」

2021.09.18 - 10.10

金光男 グッド・バイ・マイ・ラブ 参考画像 2021 © Mistuo Kim

 LEESAYAでは、金光男の個展「グッド・バイ・マイ・ラブ」を開催する。10月17日まで。

 金は1987年大阪市生まれ。2012年に京都市立芸術大学大学院を修了後、「VOCA展2014」奨励賞や「京都市芸術新人賞」を受賞。金沢21世紀美術館や、台湾での個展を開催するなど国内外で活躍している。昨年、LEESAYAでの個展「Control Control」では作家として、父として奔走する日々の営みを、独自の世界観で表現し好評を得た。

 金はシルクスクリーンの技法を応用し、蝋を塗ったパネルにイメージを定着させる。転写されたイメージにあえて熱を加え、溶けて崩れながら固められた作品は、外国人として日本に生まれ育った、自身の社会的な不安定さや曖昧な状況が投影されている。

 本展にあたって、自身の現在地を考えるうえで、改めて作家自身のルーツについて見直すことにした金。戦時中、朝鮮半島から日本に渡ってきた母の様々な体験談を聞いて育ったなかでも、渡来の道中空腹時に食べるように、と1枚だけ渡されたビスケットを、幼い母がいつまでも握りしめていたというエピソードは金にとって強い印象として残っていると言う。

 展覧会タイトルは金の母が好んで聴いていたアン・ルイスの「グッド・バイ・マイ・ラブ」から選んだもの。歌の冒頭の一節から1948年の4・3済州島事件と、1950年に始まった朝鮮戦争の勃発、母親が日本で暮らすこととなった経緯を母の愛した歌に重ね思い馳せる。

 社会の多様性に対する許容も進み、人種や国籍を問わず様々な人々が自由に行き来できるとされている時代。どうしようもなく接続されてしまう社会の円環や、遠くの国で起こっているリアリティの希薄さをはじめ、金の作品群からは、現代において多くの人々が共有し得る様々な感情を重ね見ることができるだろう。