EXHIBITIONS

開館55周年記念特別展

速水御舟と吉田善彦

―師弟による超絶技巧の競演―

2021.09.09 - 11.07

速水御舟 名樹散椿 1929(昭和4) 山種美術館蔵 重要文化財

速水御舟 和蘭陀菊図 1931(昭和6) 山種美術館蔵

吉田善彦 大仏殿春雪 1969(昭和44) © Noriko Yoshida 2021 /JAA2100171

 1966(昭和41)年に日本初の日本画専門の美術館として開館した山種美術館。2021年に開館55周年を迎えることを記念し、同館のコレクションの「顔」とも言える日本画家・速水御舟(1894〜1935)と、その弟子の吉田善彦(1912〜2001)に焦点を当てた特別展「速水御舟と吉田善彦―師弟による超絶技巧の競演―」を開催する。

 横山大観や小林古径らから評価を受け、23歳の若さで日本美術院(院展)の同人となった速水御舟。「梯子の頂上に登る勇気は貴い、更にそこから降りて来て、再び登り返す勇気を持つ者は更に貴い」という本人の言葉通り、古典を基礎に次々と新たな作風や技法に挑み、40歳で早世するまで日本画壇に新風を吹き込み続けた。

 いっぽうの吉田善彦は、17歳で姻戚関係の御舟に弟子入り。写生や古画の模写、作画姿勢などを学び、また戦中・戦後には、法隆寺金堂壁画の模写事業にも参加した。これらの経験を通じて、善彦は古画の風化した美しさを追求するようになり、金箔ともみ紙(がみ)を用いた「吉田様式」と称される独自の絵画世界を生み出すに至った。

 本展では、2人が生み出した超絶技巧による作品を紹介する。御舟の作品では、近年の調査で西洋の顔料を使っていた事実が判明した《和蘭陀菊図》をはじめ、金砂子を地一面に使う「撒きつぶし」を用いた《名樹散椿》(重要文化財)、そして本人いわく「二度と出せない」色で表した《炎舞》(重要文化財)などを展示。また善彦の作品では、「吉田様式」を初めて用いた《桂垣》や、この技法を熟達させた《大仏殿春雪》《春雪妙義》などを展示し、2人の代表作をはじめとする優品が並ぶ。

 伝統的な技法を土台に精緻で独創的なアレンジを加えて、それぞれ唯一無二の画風を確立した御舟と善彦。本展を通じ、師弟が追求した超絶技巧の世界を堪能したい。