EXHIBITIONS

岡本敦生展「CALDERA」

岡本敦生 CALDERA-b(部分) 2021

 日本を代表する彫刻家のひとり・岡本敦生の個展「CALDERA」が開催。ギャルリー東京ユマニテでは7年ぶりの新作展となる。

 岡本敦生は1951年広島県生まれ。多摩美術大学大学院彫刻科修了後、80年代から作品を発表してきた。これまで、中原悌二郎賞優秀賞(1996)、ヘンリー・ムーア大賞(1983)などを受賞し、その後も国内外の展覧会に出品。各地のシンポジウムに参加し、野外彫刻も数多く手がけている。また2005年には、画家・野田裕示とのコラボレーションで「第21回現代日本彫刻展」毎日新聞社賞を受賞するなど、日本を代表する彫刻家として活躍。さらに近年ではイギリス各地で個展を行い好評を博した。

 太古の昔から身近な素材である石。岡本は、そのもっとも根源的存在である石が本来持っている内包する記憶をよみがえらせてみたいという思いから、新たな彫刻を生み出してきた。

 岡本の代表作「記憶体積シリーズ」は、御影石を素材にいくつかのパーツに分割し、再び構築した有機的なフォルムが特徴。また前回の個展「excavation」(2014)では、石の重量を感じさせない生き物のようなユニークなかたちが出現した。

 本展のタイトルは「CALDERA(カルデラ)」。山の噴火、大地の陥没などによるカルデラには水が溜まって湖ができ、水があった痕跡が残る。これは近年、岡本が制作を続ける水中屈折のかたちにもつながっている。

 本展では、黒御影石、玄武岩の玉石などを素材とした彫刻および壁面設置の作品など3点を中心に出品。石の表面には無数のノミ跡が残され、新たなかたちが浮き上がり、つねに真摯に石と向き合ってきた岡本のさらなる展開を見せる。

「大学を出た頃に、水の屈折から導き出した形を作っていた。その形の作り出す領域が不可思議な空域だと感じ、そしてここ数年、再度屈折した形を作り始めている。その原点に、嘗てカルデラに魅せられていた自分が居たことを、思い出している(岡本敦生)」。