EXHIBITIONS

鈴木知佳・鈴木のぞみ「時点」

2021.08.29 - 10.17

左から 鈴木知佳《計り知れない時を計る》のためのドローイング(2021)、鈴木のぞみ《Specimen of Shadow》(2021)

 rin art associationでは、鈴木知佳と鈴木のぞみによる展覧会「時点」を開催。本展では、事物の過ごす時間に目を向ける2人の作家により、日常のなかではとどめることのできない「時点」が凍結され、差し出される。

 鈴木知佳は1982年東京都生まれ。2009年東京造形大学大学院造形研究科造形専攻美術研究領域修了。写す/映す/遷すことを通して存在の起源をたどり、事物が体現している時(生成と消滅の繰り返しの内に在るいま)に臨もうと試みている。

 鈴木のぞみは1983年埼玉県生まれ。2015年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程修了。現在、同大学院博士後期課程在学中。何気ない日常の事物に潜む潜像のような記憶を、写真の原理を通して光の跡/痕として顕在化しようと制作を行う。

 本展の「時点」とは、時間の流れのなかのある一点、人間・自然の営みとともに在り、実社会の動きや自然の推移と切り離すことのできない時間の一点を示す。

 鈴木知佳の「名付けられた色の終わり 名付けられない色のはじまり」では、緯度経度の示された路傍・海岸等で採取した砂から、1ミリ足らずの砂粒と化したプラスチックやガラス、陶片などかつて何かだったものの欠片が識別され、色ごとに並べられる。また「Plastic Landscape」では、海辺のプラスチック漂流物がゴミとして燃やされ、溶けて砂や木やふれたすべてを吞み込んで固まり、陽に波に晒されて風化したものが、マクロレンズによって風景として写し出される。2つのシリーズの新作を中心に、人工物という人が自然のなかから手に入れた営みが人の手を離れ再び自然の時間の内へと還ってゆくさまが、ファウンド・オブジェクトとして置き換えられる。

 いっぽう鈴木のぞみの「Monologue of the Light」のカラーポジフィルムによる新作は、物質が朽ちることで生じた小さな穴により光が束ねられ、そこに潜在していた像をピンホールカメラの原理によって写し、事物のまなざしとも言えるような光景を可視化する。そして新シリーズ「Specimen of Shadow」では、庭や路端の石にサイアノタイプ感光液を塗布して感光性を与えることで、その石に近接する植物が落とす影が焼きつけられ、事物の記憶が標本のように採取される。