EXHIBITIONS

フィリップ・フラニエール写真展「 Balancing Act」

2021.07.30 - 08.22

フィリップ・フラニエール 「Greppon」シリーズより Untitled 2019

フィリップ・フラニエール 「Greppon」シリーズより Untitled 2021

フィリップ・フラニエール 「Greppon」シリーズより Untitled 2018

フィリップ・フラニエール 「Punctum」シリーズより Untitled 2020

フィリップ・フラニエール 「Punctum」シリーズより Untitled 2020

 スイス出身の写真家、フィリップ・フラニエールの個展「Balancing Act」が渋谷のSAIで開催される。7月30日〜8月22日まで。

 フラニエールは1987年、スイスアルプスのワリス生まれ。ローザンヌ州立美術学校(ECAL)にて写真を修学後、写真家としてのキャリアをスタートし、自身初のモノグラフ『Snowpark』は国際的写真集賞「Paris Photo-Aperture Foundation First Photobook Award」のセレクションにも取り上げられた。またロンドンやパリでコマーシャルフォトグラファーとしても活動。Wallpaper*、Numéro、ICONなどの出版物や、Decencia、Hermès、Dior、Cartier、Patek Philippeほかブランドとのコラボレーションも定期的に行う。

 コンセプチュアルなテーマで、写真の美しさを多様なアプローチで示すフラニエール。本展は、2つの代表的な写真シリーズ「Greppon」「Punctum」の最新作により構成される。

「Greppon」は過去5年間にスイスのワリスで撮影され、作家による自然や高山の環境に結びついた神話を探究したいという思いから生まれた。高齢化する田舎の山村地帯を見つめると同時に、都会ならではの圧迫された閉塞感から逃れたいという願いも込められている。フィクションとドキュメンタリーのあいだで揺れ動き、現実を歪めてものを記号化することで神話が形成される方法を反映する「Greppon」は、写し出されるイメージは自然環境の美しさを捉えていながらも、個人的な経験に満ちた環境や場所との個人的で時には困難な関係に伴う、実存的な恐怖、時間の重み、死の不安も垣間見せる。

 いっぽう「Punctum」は、新型コロナウイルスによるロンドンの最初のロックダウン時に、作家自身のスタジオで制作を始めたシリーズ。積み木で遊んでいるような、様々な構図でオブジェクトを配置してストーリーをつくる楽しさのもと、シンプルなプロセスで生み出された同名シリーズは、フラニエールなりのパンデミックへの対応であり、パンデミックの最中だからこそ完成した。

 本展は、ヨーロッパを中心に現在多くの注目を集めているフラニエールの、2つの代表的なシリーズを同時に鑑賞できる貴重な機会。「Greppon」シリーズのモノグラフはKodoji Pressからの出版を予定しているほか、「Punctum」シリーズはエディションつきポスター(ED.20)として、またシリーズに合わせたZINE(ED.500)も販売される。