EXHIBITIONS

安田悠「たゆたうままに時間の中で」

安田悠 Between - beyond drifting

 アーティストの安田悠が、ユカ・ツルノ・ギャラリーでは約3年ぶりとなる個展「たゆたうままに時間の中で」を開催。本展では、水の流れのように移ろいゆく事象や瞬間への自身の興味をそのままに、イメージであると同時に物質としての存在を強める絵画のあり方を探求した新作のペインティングを発表する。

 安田は1982年香川県生まれ。2007年武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油絵コース修了。個展や展覧会での作品発表に加え、虎ノ門ヒルズレジデンスのパブリックワークを手がけるなど活動の幅を広げている。

 安田の絵画は、中間色の何層ものレイヤーが生み出す水の動きや、時間や空間の流れを感じさせる風景のような流動的な世界が特徴。初期では具象的に描かれた風景は、色彩の集合体が織りなす抽象的な絵画へと変容し、作家がスタイルを追求するなかで具象と抽象を行き来してきた。制作過程では、何かの具体的なイメージや完成図を目指して描かれるのではなく、各々の筆が残す一瞬一瞬に起こる事象を色彩や色の形態の偶然性としてつなげながら、全体として移ろい流れゆくイメージを表現。近年は使い慣れた刷毛や筆だけでなく、掃除ブラシやケーキ用ナイフなど用途が異なる日用品を積極的に使用している。

 安田は、従来と同じ身体的な動きをしていても絵画に残る痕跡の違いによって、親しんだ営みのなかに現れる自身の手ではコントロールすることができないイメージとそのズレにおもしろさを感じると話す。新作の多くでは絵画空間に現れた流れを画面外へと放出させるだけではなく、絵画の画面上に流れを閉じこめるかのように、流動的な質感とは違う領域が描かれ、また枠が強調されている。

 これらは、絵画を取り巻く現実世界や表象世界、主体や客体、内と外といった異なる境界を曖昧化しながらも結びつくように発展し、また流れゆく瞬間や、瞬間に揺れ動かされる様々な心の様相を引き起こしながら、イメージと物質的なあり方を行き来する絵画として描かれている。