EXHIBITIONS

メキシコ独立200周年

メヒコの衝撃―メキシコ体験は日本の根底を揺さぶる

2021.07.10 - 09.26

スズキコージ 死者の日 2000

北川民次 メキシコ三童女 1937 愛知県美術館蔵

岡本太郎 明日の神話 1968年(部分) 川崎市岡本太郎美術館蔵

河原温 カスパーケーニッヒ氏に宛てた絵葉書、1968年5月10日、I Got Up(1968-79)より © One Million Years Foundation

利根山光人 太陽の神殿 1966 東京都国立近代美術館蔵

水木しげる 雨と稲妻の神チャック © 水木プロダクション

深沢幸雄 アステカの旅 1969 市原湖畔美術館蔵

小田香 Day of the Dead 2021

 市原湖畔美術館では、メキシコのスペインによる征服から500年、独立から200年にあたる2021年の節目に、展覧会「メヒコの衝撃―メキシコ体験は日本の根底を揺さぶる」を開催。メキシコと日本人アーティストの化学反応を見せる。

 同館が所在する千葉県は、日本とメキシコの交流が始まった地として知られている。1609年、スペイン統治下にあったフィリピンからメキシコに向かう帆船サン・フランシスコ号が御宿沖で座礁し、300人以上の遭難者を地元の住民たちが救出、大多喜城主・本多忠朝が手厚く保護し、徳川家康のはからいで無事帰国させた歴史がある。

 本展は、日本とメキシコの交流の歴史をひもときながら、メキシコの歴史・風土・人・芸術に衝撃を受け自らの表現に向きあってきた8人のアーティストにフォーカス。メキシコの何が作家たちを惹きつけたのか、そのメキシコ体験を多角的に解き明かすことを試みる。出展作家は、北川民次、岡本太郎、利根山光人、深沢幸雄、河原温、水木しげる、スズキコージ、小田香。

 革命直後のメキシコに渡り、民衆の芸術を求める壁画運動に感銘を受け、帰国後も反骨の画家として生きた北川民次。1955 年、東京国立博物館で開催された「メキシコ美術展」に衝撃を受け、同国滞在を経て新たな表現へと向かった利根山光人、河原温。自らのうちに「メキシコ的なるもの」を発見し、巨大壁画《明日の神話》を描いた岡本太郎。版画指導に招聘されたメキシコでその作風を一変させた戦後銅版画の第一人者・深沢幸雄。メキシコ民衆が生きる世界に妖怪を幻視し、膨大な数の仮面をコレクションした水木しげる。「死者の日」の祭りに魅了され、強烈な極彩色で魔法画を描き続ける絵本作家・スズキコージ。そして、映画『セノーテ』において、現世と黄泉の世界を結ぶと信じられるマヤの洞窟泉をめぐる神秘の旅を撮りあげた小田香。

 コロナ禍により、生と死のあり様、現代文明の基盤そのものが問われるいま、アーティストたちが共振した「メヒコ(Méjico)」は、私たちに多くの示唆を与えてくれるだろう。