大平龍一「The Yellow Portal」

　大平龍一の新作個展「The Yellow Portal」がNANZUKA 2Gと3110NZ by LDH kitchenの2会場で開催される。

　大平は1982年東京都生まれ。2011年東京藝術大学大学院で博士号を取得。山形県の鶴岡アートフォーラムにて個展「ぼうけんやろう」（2012）、世界遺産上賀茂神社で開催された「よりしろプロジェクト」における大型彫刻作品「TONGARIMARU」の展示・奉納（2013）のほか、個展「絶景」（NANZUKA、東京、2014）、「RYUICHI OHIRA」（GALERIE VERA MUNRO、ハンブルク、2015）、グループ展「JP POP UNDERGROUND」（心斎橋PARCO イベントホール、大阪、2020）など多くの展覧会やプロジェクトを通し、作品を発表してきた。

　大平が作品で扱う黒は、木材を炭化させることで生み出されている。素材の色が炎の影響によって化学反応を起こし、漆黒に変化するという木材でしか表せない表現方法を取り入れることで、自然の環境と人間の創作行為、あるいは表現とエネルギーの数値化され得ない関係性といったテーマを暗示する。

　また、自身も熱心な車のマニアである大平は、すでに過去の遺産となりつつある日本の改造車文化を掘り下げた作品を制作。「古くなり価値が下がった車を改造してカッコよくする」といったカスタムカルチャーが見直される近年、大平はコミカルな表現でその文化の一端を描いている。この他にも大平は、日本に古くから伝わる妖怪や鬼、神話上の生物といった人間社会の闇を照らすモノを表現し続けている。

　本展では、新たに大平が取り組んでいる木材を削り出したレリーフ絵画の新作シリーズに加え、クスやケヤキの丸太から削り出した壷、鬼娘を表した木彫作品を展示。大平はコロナ禍において、これまでも病原菌やウイルスを悪魔として擬人化して描いてきた美術の歴史をひも解き、古い仏像に使われていたパーツや玉虫の羽といった呪術的な表現やディテールを盛り込み作品を仕上げた。

　人間には制御しきれない自然や、目に見えない事象をかたちにしようとする作家の意図を会場で体験してほしい。会期はNANZUKA 2G（6月25日～7月18日）と3110NZ by LDH kitchen（6月22日〜7月24日）。