EXHIBITIONS

茶入と茶碗

「大正名器鑑」の世界

2021.06.01 - 07.11

肩衝茶入(かたつきちゃいれ) 銘 松屋(まつや) 福州(ふくしゅう)窯系 中国・南宋~元時代 13~14世紀 根津美術館蔵 重要文化財

『大正名器鑑(たいしょうめいきかん)』(初版本) 高橋義雄(箒庵[そうあん])編 日本・大正10~昭和2(1921~27) 根津美術館蔵

堅手茶碗(かたでちゃわん) 銘 長崎 朝鮮・朝鮮時代 16~17世紀 根津美術館蔵 重要文化財

重要文化財 鼠志野茶碗(ねずみしのちゃわん) 銘 山の端(やまのは) 美濃 日本・桃山~江戸時代 17世紀 根津美術館蔵

玉柏手茶入(たまかしわでちゃいれ) 銘 村雨(むらさめ) 瀬戸 日本・桃山~江戸時代 16~17世紀 根津美術館蔵

 根津美術館では、茶人のための大名物図鑑というべき本の刊行100年を記念した展覧会「茶入と茶碗 ―『大正名器鑑』の世界―」を開催している。

 古くから茶の愛好者に大切に扱われてきた「茶入」と、手に取ることで、一層愛着が増す「茶碗」は、今日の茶の湯でもっとも人気の高い道具と言えるだろう。この2つの道具が重視されている理由のひとつに、1921(大正10年)より刊行が始まった『大正名器鑑(たいしょうめいきかん)』の存在がある。全9編11冊にも及ぶこの本では、875点もの茶入と茶碗(天目を含む)の名品が取り上げられ、それらの観賞の指針が明確に示された。

『大正名器鑑』を編纂した高橋義雄(1861〜1937、号・箒庵[そうあん])と、根津美術館のコレクションの礎を築いた初代・根津嘉一郎(1860〜1940、号・青山[せいざん])は年齢が近く、茶の湯を通しての盟友だった。帯庵は自らを嘉一郎の茶の湯の「後援者」と称し、また嘉一郎は帯庵を良き助言者として全幅の信頼を置いていた。『大正名器鑑』最後の第九編が発行されたのち、1929(昭和4)年に箒庵の慰労会を主唱したのも嘉一郎だった。

 本展は、同館が所蔵する茶入と茶碗を中心に『大正名器鑑』の成立過程を概観。そして同書の刊行関連行事で用いられた作品を通して、編者の高橋義雄と初代・根津嘉一郎の友情の証に光を当てる。