EXHIBITIONS

渡辺志桜里個展「ベベ」

2021.05.30 - 06.20

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渡辺志桜里 + 渡邊慎二郎「Dyadic Stem」(The 5th Floor、東京、2020)展示風景より Photo by Yuu Takagi

 渡辺志桜里の初個展「べべ」がWHITEHOUSEで開催される(入場はパスポート申請者限定)。本展キュレーションはChim↑Pom・卯城竜太。

 渡辺は1984年東京都生まれ。2015年に東京藝術大学美術学部彫刻科を卒業後、17年に同大学大学院を修了。皇居を身近な自然として育った経験をベースに、独自の生態系やジェンダーの視点から制作を行う。昨年の渡邊慎二郎との2人展「Dyadic Stem」(The 5th Floor、東京)や「ノンヒューマン・コントロール」(TAV GALLERY、東京)などへの参加を機に、その取り組みが注目されている。

 渡辺の代表作であるインスタレーション《サンルーム》は、植物、魚、バクテリア、線形動物などを別々の水槽に分離させ、それらをホースで連結して水を循環させることで、自動の生態系をつくり出すもの。17年に発表した第1作の植物と魚、水はすべて皇居から採取された。その後、水や生物の種類を変えてアップデートが続けられ、作家はその過程で固定種同士の交配から考える純血論や、金魚の繁栄という人工的な種の継承など、様々なものに「皇室の宿命」を見てきたと言う。

 本展では、《サンルーム》をさらに発展させ、富士山由来の溶岩、緑藻、そして外濠で採取されたイトメを水槽に加える。「人類絶滅後」や「ノンヒューマン」というテーマで語られることが多い本作だが、渡辺は、鑑賞の条件として「電気」が必要である矛盾を受け入れつつ、今回はそれを供給する「人間」を生態系に介入させることを目論む。これは、人の営みが期せず、何かの生き物を世に移動させるという流れを生み出す試みだと言う。

 また渡辺は会期中、WHITEHOUSEの全館を使ってインスタレーションを展開するほか、外来種の種を蒔く、近所の動物とコミュニケーションを測るなど、展覧会開催とともに日課として続けてきた密かな活動も行う。