EXHIBITIONS

Tanking Machine -Rebirth-《タンキング・マシーン‐リバース》

90年代のヤノベケンジ展

2021.05.29 - 07.19

ヤノベケンジ タンキング・マシーン‐リバース 2019 撮影=豊永政史

ヤノベケンジ アトム・カー(ホワイト) 1998

ヤノベケンジ アトムスーツ・プロジェクト:砂漠 1998

 京都のMtK Contemporary Artでは、ヤノベケンジの個展「Tanking Machine -Rebirth-《タンキング・マシーン‐リバース》 90年代のヤノベケンジ展」を開催する。

《タンキング・マシーン》(1990)はヤノベのデビュー作であり、自身の美学を見つめ直すことで生まれた作品。同時に、1990年代の日本の現代美術のトレンドのひとつ「ネオ・ポップ」を牽引した記念碑的な作品だ。

 1989年、ヤノベはRCA(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート)に短期留学した際、幼少期から西洋美術の大作を身近で見て育つ子供たちの姿を見て、同じ美学と方法では敵わないことを痛感し、マンガ・アニメ・特撮・SFなどで養われた自身の美学を再考した。

 そこで、神経生理学者ジョン・C・リリーの考案した感覚遮断装置「アイソレーション・タンク」をヒントに、疑似的な胎内回帰をし、自身の原点に戻って「再生」する彫刻を着想。留学中にプロトタイプを制作し、帰国後、隔離されたタンク内で生理的食塩水に浸って瞑想する体験型の彫刻作品《タンキング・マシーン》として完成させた。

 90年、東山の三条通沿いにあった「アートスペース虹」の個展で《タンキング・マシーン》を発表し話題になると、96年にはニコラ・ブリオーがキュレーションした「トラフィック」展(CAPCボルドー現代美術館)に出品。本作は「リレーショナル・アート」としても位置づけられるようになり、それから30年を経た2019年には、「パレルゴン」展(Blum & Poe、ロサンゼルス)のために本作を再制作している。

 かつて、ペストが猛威をふるった1665年、故郷で自宅待機をしていたニュートンはひとりで思索をするなかで、微分積分学、万有引力、光学に関する様々な発見をし、「驚異の年(Year of Wonders)」と呼ばれている。

 それから現在へ、新型コロナウイルスによるパンデミックで社会全体が「隔離」されているなか、創造性が育まれ「再生」することを願ってヤノベが再制作した《タンキング・マシーン-リバース》を、再び京都の地に展示する。