EXHIBITIONS

クリスティアン・ボッフェッリ「APPUNTI -備忘録-」

2021.05.20 - 06.13

クリスティアン・ボッフェッリ Appunti 2020 © Cristian Boffelli

 イタリア出身のアーティスト、クリスティアン・ボッフェッリの個展「APPUNTI -備忘録-」がSYP GALLERYで開催される。

 ボッフェッリは1972年生まれ。ミラノのブレラ国立美術大学絵画科を修了。2002年に4人の作家とともに、知的障害者の創造活動のための協同組合「L.P.K.工房」を設立。その後、10年にわたり絵画や版画、陶芸を通して、障害者や子供の表現活動の促進に寄与する。同時に、絵画や版画を中心とした作家活動を続け、ブラジル、日本、インド、スリランカ、アメリカなど世界各地での滞在制作や展示を行ってきた。

 ボッフェッリが一貫して追究しているテーマは、動物や人間の「かたち」。うごめき変わり続けるそれらの「かたち」は、ねじ曲げられ、ほとんど見分けがつかなくなり、不思議と馴染み深い見かけを取り戻す。キャンバス、段ボール、金属、木、紙など、様々な素材の上に版画やドローイングを使用し探究してきたが、ニュートラルな空間に力強く描かれる1本の黒い線こそが、その全貌を完成させる。

 作家は何年も同じテーマを追求し続けている理由を、「この黒い線がどこへ自身を導くのかを見届ける、いわばより遊びに近い実験のようなものだ」と語る。

 本展は、ボッフェッリの過去3年の仕事の集大成であり、とくにスクリーンプリントの技術を多用した作品を展示。京都にあるシルクスクリーン工房とのコラボレーションによって、かつてインドやスリランカで実現してきたような大判サイズの実験を再開し、大量のエディションを可能とするシルクスクリーンという技術を使いながらも、あえてユニークピースの作品に仕上げるという可能性を見出す。そして版画の技術を営利としてでなく、表現言語の選択として使用していることを強調する。

「イタリア語のAPPUNTIの様々な定義の中でも、私は『ある話の要点を手短に素早く書き留めること』をタイトルに込めました。この場合の『話』とは、私の人生における物事との関連、特に自分の存在に関わる事柄です。メモされた線は、『ここ』にいる自分の存在をイメージ上に留めるための手段になっているのです。おそらく、家族や子供、そして社会的生活を持つことに加えて、『ここ』での自身の存在を正当化するための試みかもしれません」(クリスティアン・ボッフェッリ)。