大成哲「勿体 - buttai -」

　プラハを拠点に活動するアーティスト・大成哲（おおなり・てつ）の個展「勿体 - buttai -」が、TEZUKAYAMA GALLERYのVIEWING ROOMで開催される。

　大成は1980年東京都生まれ。2004年に日本大学芸術学部美術学科彫刻コースを卒業し、同年、東京藝術大学大学院に入学。その間、プラハ美術アカデミーとプラハ工芸美術大学に各1年ずつ在籍し、08年に東京藝術大学大学院修士課程を修了。再びチェコへと渡り、ガラス、石、木などの素材を用いた彫刻作品、インスタレーション作品を中心に精力的に発表している。

　大成は様々な素材を扱いながらも、「人の手が加わる事で物質が変化する際に起こる現象や関係性」をテーマにこれまで作品制作を行ってきた。その作品の多くは創造と破壊、結果と過程、作為と無作為といった対比性を持って鑑賞者に提示される。

　16年の個展で発表した作品「tear」は、チェコの伝統技術であるカットガラス（クリスタルカット）の技法を駆使しながら、ヒビを模して彫刻した模様（人工美）と瞬間的に発生するヒビ（自然美）の対比を、一対二点のガラス彫刻で提示し、美の本質に迫ろうとする試みを展開した。

　本展では、世界各地のギャラリスト、キュレーター、アーティストの名刺を素材に、スグラフィットと呼ばるれるルネッサンス時代に編み出されたグラフィックの技法を参照した彫刻作品「monos」を中心に展示。幾何学模様にカットされた名刺は、彫刻の対象物として作為的に彫られた部分とその行為によって無作為に生じた非対象物の2つに切り分けられているが、相似の型をなし、本質的には同価値であることを示唆する。また同作品は、彫刻という創造行為はある種の破壊行為と表裏一体の関係で成り立っているということも鑑賞者に暗示する。