EXHIBITIONS

東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展

2021.04.24 - 06.09

東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画 濤声(部分) 1975(昭和50) 唐招提寺蔵

東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画 濤声(部分) 1975(昭和50) 唐招提寺蔵

東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画 山雲(部分) 1975(昭和50) 唐招提寺蔵

東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画 桂林月宵(部分) 1980(昭和55) 唐招提寺蔵

唐招提寺 御影堂内

第二期障壁画《揚州薫風》を制作中の東山魁夷

 神戸市立博物館は特別展「東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展」を開催。近代日本画の巨匠・東山魁夷が生涯でもっとも長い年月をかけて制作に取り組んだ、唐招提寺の御影堂障壁画を再現し一堂に展示する。

 清澄で抒情性を湛えた風景画の数々で知られる東山魁夷。横浜で誕生し、3歳から東京美術学校に入学するまでの少年時代を神戸で過ごした東山は、著書『わが遍歴の山河』において、「私の少年時代が幸福であったと今でも思えるのは、神戸には山があり海があったからです」と回顧している。

 中国から日本に渡り、人々に戒律の教えを授けるべく唐招提寺を開いた鑑真和上。その千二百年忌を記念して、1964年に《鑑真和上坐像》(国宝)を安置する御影堂の建立が念願され、1971年に東山は御影堂の障壁画の制作を正式に承諾した。東山は障壁画制作にあたり、日本の風景の象徴として上段の間に山を、宸殿(しんでん)の間に海を描くことを構想。東山は日本各地を旅して海と山のスケッチに没頭し、これらをもとに構図をまとめ下図から本制作へと進めていった。

 障壁画は、5つの部屋にある68面の襖と床の壁面からなり、それらに《鑑真和上坐像》を収める厨子内部の扉絵を加えると80メートルを超える長大な作品。日本の風景を描いた上段の間の《山雲》と宸殿の間の《濤声》が1975年に、鑑真の故国の風景を描いた《黄山暁雲》(桜の間)、《揚州薫風》(松の間)、《桂林月宵》(梅の間)が1980年に奉納され、そして翌年、松の間に据えられた厨子の扉絵《瑞光》が納められ、10年もの歳月をかけて全体が完成した。

 奈良・唐招提寺の御影堂が一般に公開されるのは、毎年6月6日の開山忌を含む3日間のみ。御影堂内部を再現展示する本展では、障壁画の臨場感を間近で味わうことができる。

 会場は唐招提寺における観覧順路に準じて、博物館1階ホールの導入部から始まり、特別展示室1(3階)、南蛮美術館室(2階)、次いで特別展示室2(2階)の順で観覧。まず、御影堂正面に位置する宸殿の間の壁画《濤声》と上段の間の《山雲》、そして鑑真の故国の風景を描いた《揚州薫風》(部分)、《桂林月宵》(部分)とそれぞれの関連スケッチを展示。続いて、鑑真の故国の風景をイメージした障壁画《黄山暁雲》(桜の間)、《揚州薫風》(松の間)、《桂林月宵》(梅の間)を中心に、上段の間の床の間を飾る《山雲》を再現し、ここでも制作過程を示すスケッチなどを公開。最後は、御影堂の松の間に安置された《鑑真和上坐像》の厨子の扉絵の試作を紹介する(後期はパネル展示)。

 現在、御影堂は修理事業を行っており、しばらく公開の機会はない。本展は、東山が鑑真に捧げた祈りの美を堪能できるまたとない機会となる(会期中にスケッチや下図など関連資料の展示替えあり、障壁画は通期展示)。