EXHIBITIONS

ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展

「ストーリーはいつも不完全……」「色を想像する」

小山穂太郎 Cavern 2005 撮影=早川宏一 東京オペラシティ アートギャラリー蔵

李禹煥 風と共に 1989 撮影=斉藤新 東京オペラシティ アートギャラリー蔵

堂本右美 ここ 1998 撮影=斉藤新 東京オペラシティ アートギャラリー蔵

奥山民枝 シリーズ迣:日尽 1999 撮影=斉藤新 東京オペラシティ アートギャラリー蔵

二川幸夫 『日本の民家』簸川平野の農家 島根 1953-59 撮影=早川宏一

白髪一雄 貫流 1973 撮影=早川宏一

相笠昌義  水族館にて 1976 撮影=斉藤新 東京オペラシティ アートギャラリー蔵

ミズ・テツオ Johann Sebastian Bach 1990 撮影=早川宏一

大野俊明  風の調べ:洛北大原 宝泉院 1995 撮影=斉藤新 東京オペラシティ アートギャラリー蔵

三宅一樹 YOGA―逆さの氣息 2006 撮影=早川宏一

 東京オペラシティアートギャラリーの収蔵品の成り立ちを踏まえた企画展「色を想像する」と、うす明かりのなかを懐中電灯で照らして「見ること」を意識する企画展「ストーリーはいつも不完全……」が開催。2つの展覧会は、アーティストのライアン・ガンダーの企画によるもの。

 東京オペラシティアートギャラリーの核である「寺田コレクション」は、東京オペラシティ街区の地権者でもあった寺田小太郎(1927〜2018)の寄贈によるプライベート・アイ・コレクション。戦後の国内作家を中心とした約3700点にのぼるコレクションは、絵画、彫刻、陶芸、版画、写真など多岐にわたり、日本の戦後美術の広い範囲を包括するとともに、寺田個人の視点に基づく独自性が特徴だ。

 今回の企画を手がけたライアン・ガンダーは1976年イギリス生まれ。コンセプチュアル・アートの新しい地平をひらく作家として世界のアートシーンで注目を集めている。日本で2017年に国立国際美術館(大阪)の個展と、作家自らのキュレーションによる収蔵品展が同時開催され話題になった。

 東京オペラシティアートギャラリーでの「ガンダーが選ぶ収蔵品展」は、2021年に予定していたガンダーの個展が、新型コロナウイルス感染症の影響で延期決定となり企画が始まったもの。「この状況で僕にできることはないだろうか」「収蔵品展のキュレーションはイギリスからできるのでは」とガンダーからの申し出で、2つの展覧会を開催することとなった。

 同館4階の「色を想像する」では、「寺田コレクション」がプライベート・アイ・コレクションであるという成り立ちを踏まえ、個人の邸宅における伝統的な美術品の飾り方にならって「サロン・スタイル」で展示を構成。寺田が収集のテーマのひとつとしていた「ブラック&ホワイト」に呼応して、黒と白のみの作品を選び、大きな壁面の上下左右いっぱいに作品を並べる。

 いっぽう3階の「ストーリーはいつも不完全……」は、「あたりまえ」を新たな視点で観察してきたガンダーの考案で、展覧会の常識をくつがえす「うす明かりの展示室内を懐中電灯で照らしながら作品を鑑賞する」という試み。来場者は入口で懐中電灯を取り、うす明かりの展示室内で作品を見るために自ら光を当てるこの仕掛けは、来場者の「見たい」気持ちを再確認させ、また、一人ひとりが作品と一対一の親密な関係をつくる機会となるだろう。

※東京オペラシティアートギャラリーは6月1日より再開し、本展の会期最終日を6月24日まで延長(当初は6月20日まで)。また、6月中の月曜日(7日、14日、21日)は臨時開館する。混雑時など密の回避のため入場制限を行う場合あり。最新情報は公式ウェブサイトへ。