EXHIBITIONS

滝沢広「オブジェに指紋」

2021.04.03 - 06.20

滝沢広 Fingerprinted Objects(Prototype)#01 2021

滝沢広 Fingerprinted Objects #06 2021

Fingerprinted Objects #08b / #10a 2021

会場風景

 写真表現をとらえ直すアーティスト・滝沢広の個展「オブジェに指紋」がカスヤの森現代美術館で開催されている。

 滝沢は1983年埼玉県生まれ。2006年目白大学人間社会学部心理カウンセリング学科を卒業後、写真を用いた様々な表現で作品を制作し続けている。近年の個展に、「The Scene(Berlin)」(rin art association、群馬、2020)、 「AVALANCHE/DUAL」(POST、東京、2017)などがある。

 滝沢は、「物質」を写真(映像)でとらえることによって「イメージ」の世界に引き込み、イメージ化された像を再構成し、新たな支持体に定着させることでイメージと物質の境界を往来するように独自の世界を構築する。その作品は「New Photographic Objects 写真と映像の物質性」(埼玉県立近代美術館、2020)で展示されるなど、近年注目を集めている。

 本展では、指紋の持つ固有性やものに触れたことの証として刻まれる「指紋」をキーワードに、オブジェとイメージ、触知と視覚、双方の領域にわたる主題をモチーフとした新作を発表する。

 本展の中心となる「Fingerprinted Objects」シリーズにおいて滝沢は、一般的に、可塑性を持つ粘土がブロンズなどの不可逆的な立体物に置き換えられるのに対し、粘土そのままのオブジェを撮影して平面作品に仕上げている。そして今回、物質からイメージへの変換を見せる「Fingerprinted objects」のシリーズとは別に制作された動画作品「Late Visitors」では、三次元を二次元に変換しつつ、これまで写真作品で追求してきた「物質」と「イメージ」の関係に、「時間」という空間の要素が加わる。それによってさらなる広がりがもたらされ、とらえられる「イメージ」も瞬間ではなくひとつの現象として記録されている。

 滝沢の今作は、実態と現象が同じ時間の空間でせめぎ合いながら、イマジネーションによるストーリーを完成させている。