EXHIBITIONS

「blooming sensations」市川詩織 / 津川奈菜

2021.03.19 - 03.28

左から津川奈菜《喰われる子》部分(2020)、市川詩織《幽体離脱澱》部分(2021)

市川詩織 幽体離脱澱 2021

津川奈菜 喰われる子 2020

 市川詩織と津川奈菜による2人展「blooming sensations」がs+artsで開催される。

 市川は1993年埼玉県生まれ。2018年に東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻版画研究分野を修了。主に人間と動物(主にペット)の間に生まれる問題をモチーフに、ドローイングとシルクスクリーン版画を制作。市川の作品を前にすると、言語がないペットたちに対して、私たちは確かな答えを得ることが出来ないまま不毛な議論をすることを要される。

「その議論は一見無意味に見えますが、議論をするそれぞれの人間のルーツや環境をお互いに知り、認め、一緒にその答えを探していこうという過程を生みます」。そう考える市川は、見る者が議論を始めるきっかけをつくる装置としての作品を考え、互いに許し合い認め合う社会の足しになるようにと願い、制作を続けている。

 他方、津川は1991年広島県生まれ。2015年に尾道市立大学大学院美術研究科絵画(油画)研究分野を修了。津川の制作は要であるドローイングから始まり、紙に鉛筆を使いひたすら描き/消すという触覚的な行為によって、意図していなかった脈略のない絵が浮かび上がると言う。また並行して制作を続けている陶芸作品においても、ドローイングから浮かび上がったイメージから派生したり、手で掴む触覚的な感覚を膨らませたりすることで形成している。

 津川のドローイングはすべて、曖昧な印象を持ちながらも風景画のように見え、立体はそこから飛び出してきたキャラクターのようにも見受けられるが、実際に目に見た風景やモデルがいる訳ではなく、日常のなかで作家が気にかけた出来事の感覚を、手を動かすことで留めている。

 本展では、両者の作品から受ける、動物や人型のモチーフなどの可愛らしい印象と、制作過程で起こる予想外の発見に作家自身の感覚を重ねることにより形成されているという事実が交じり合う。