海老塚季史「家と生活」

「もの」「こと」と糸や布を組み合わせて作品制作を行うアーティスト、海老塚季史（えびづか・きふみ）の個展「家と生活」がs+artsで開催される。

　海老塚は1987年神奈川県生まれ。2011年に東京藝術大学美術学部工芸科染織を卒業後、13年に同大学大学院美術研究科染織を修了。偶然に手元にあるもの、自分で選んで手元にあるもの、旅行先や日常のなかで出会ったものやそれを取り巻く事柄など、様々な「もの」や「こと」を、糸や布と合わせることで作品へと昇華させる。

　海老塚は、何もないところから生み出していくのではなく、既製品や昔からあるものと手を取り合うことで、自身の力だけではつくれれないものを生み出したいと言う。

「もの」が歩んできた背景や性質を慎重に汲み取りながら「作品」という別のかたちに変えることで、捨てられずに新たな物語を見出し、紡いでいく。海老塚の作品には、一見どこに手を入れたのか分からないものから、もとの既製品としてのかたちを留めないものまで様々に合わさっているが、作家の繊細な織の技術と鋭い感性、様々な角度で観察する視点があってこそ、成し得ることができる表現方法だ。

　海老塚にとって制作の重要な要素である「旅」に行くことが難しい現状のなか、本展では、これまで集めてきた家のなかにある「もの」や「こと」にじっくりと向き合い手がけた新作を発表する。