滝沢広

　素材のテクスチャーや時間の謎と向き合い、モニュメントに痕跡を残すことで新たな層を引き出す写真家の滝沢広。砂利、岩肌、建築用の石材やコンクリート、ホテルの一室で撮影されたシーツのしわといった被写体を、固有性が奪われた一塊の質量として捉えている。

　滝沢は大量の記録をアーカイブしながら、それらを印刷、スキャンし貼り付け、撮影を繰り返すことでイメージの属性を凶暴に取り除き、人工と自然、時間と空間、実像と虚像、二次元と三次元など、あらゆる境界を横断しながら独自の制作言語を構築。形のないデジタルメディアから逃れるように、壁や柱、空間の一角などあらゆる支持体に固着したイメージが、作家の手によってさらに加工され、ときにボリュームの生じる構造体として組み替えられる。

　本展では新作を発表。展覧会に合わせ、「FIGURE」「WARP」「TRACE」など、これまでのシリーズ6作を収録した作品集も刊行する。