EXHIBITIONS

井原信次「Love Your Neighbor 2021」

2021.03.03 - 04.18

井原信次 Love Your Neighbor 2021 - Photographic Slide 35mm 2020 ©︎ Shinji Ihara Courtesy of KEN NAKAHASHI

Love Your Neighbor series 船内と手すりに置かれた船酔い袋 2019撮影 ©︎ Shinji Ihara Courtesy of KEN NAKAHASHI

Love Your Neighbor series 船内で出会った人を描いたドローイング 2019撮影 ©︎ Shinji Ihara Courtesy of KEN NAKAHASHI

井原信次 Love Your Neighbor 2021 - Photographic Slide 35mm 2020 ©︎ Shinji Ihara Courtesy of KEN NAKAHASHI

one's behavior(KEN NAKAHASHI)展示風景より、 Love Your Neighbor series 再生されなくったカセットテープ 2020 Courtesy of KEN NAKAHASHI

 井原信次の個展「Love Your Neighbor 2021」がKEN NAKAHASHIで開催される。

 井原は1987年福岡県生まれ。2010年広島市立大学芸術学部美術学科油絵専攻卒業。12年に東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻油画技法・材料研究室を修了。これまで、友人などの身近な存在、自画像などのポートレイトを主に描いてきた。

 2019年、井原は知人からの誘いで南極大陸を旅した。アルゼンチン最南端の港町ウシュアイアから出発した約2週間の船旅は日本語が通じず、インターネットにもつながらない状況で、孤立感を味わいながらも井原は船内に設置された船酔い袋と鉛筆を使って、船内スタッフや世界各地からの乗客たちを描いた。そのように見ず知らずの人と対話しながら、井原は旅を通じて大切なものを見つけていった。

 社会やコミュニティーから感じる孤独感が、同時に他者ともっとつながりたいと自身に思わせ、作品制作の根源だと語る井原。本展では、南極の旅で出会った人々を描いたドローイング、出会った時の印象や出来事を記録した文章とカセットテープ、記憶を留めるために残していた写真や映像、そして帰国後に集め始めた記憶の接続点となる些細なものなどを組み合わせる。

 本展の出品作のひとつ「Love Your Neighbor」は、クルーズ船の旅という、交通/移動のインフラ上を行き交う見知らぬ人と、コミュニケーションを重ねていくことで生まれたシリーズ。パンデミックによってこれまで見えづらかった分断が可視化されたいま、本展では、「隣人愛(Neighbor Love)=あなた自身のようにあなたの隣人を愛さなければならない」という倫理の実践と、記録をひとつのインスタレーションとして構成し、その体験を通して鑑賞者と社会の問題を身近に引き寄せる。

 井原は本展へ、「それぞれの自己から他者に優しく目を向け、私たち(WE)のなかの自己として思考を深める場になることを期待している」と言葉を寄せている。